5月23日






段々整って来たお庭






ネメシア







私は朝から落ち着かず
用もないのに玄関先に

行っては帰り、
うろうろしていました。

今日の午后には到着する
はずなのにと

父の手紙を
信じて清麻呂の来宅を
待っていました。



ようやくにして夕刻になって、

なにやら前ぶれのような
ものを感じ、

それに体が反応して、
ざわつきが一層激しくなった
ところに、

夫の戸主と共に清麻呂が
私の目の前に現れました。

夫の後ろから夫を大きく
超える姿がまず顔から
見えましたが、


これがあの幼かった弟とは
思えない立派な若者でした。



幼い時の面影はわずかに
眼元にしか残っていません
でした。


これでは街道で、
すれ違っても私にはわから
なかったであろうと思い

ながら私の方から
「清麻呂ですね、

父上のお手紙で今日の日
を待ち焦がれていましたよ。
立派になられて驚きました。」

と一息して声にしました。

ゆっくり話すと涙がこぼれ
そうになるので声が詰まる
前に言ってしまおうとした
のです。


清麻呂は目に一杯の笑みを
溜めうっすらと涙さえ浮かべ

「姉上、お久しぶりで
ございます。父より姉上の
ご活躍は聞き及んでいます。

本当にお目にかかれて
嬉しゅうございます。


備前藤野を代表して
参りました。

兵衛(とねり」として
勤めます。


宜しくお願い致します。」


と立派に言葉を返されて
驚くやら嬉しいやら、

ついつい「清麻呂、実はね、
お上にお願いをして弟が
都に参り10年ぶりの

再会
ですので歓迎の宴を催す
ため今日一日だけお休みを
下さいとお願いをして


朝から貴方をお迎えする
準備をしていたのです。

とは言ってもそう大そうな
事はできませんが充分に
寛いで下さい。」



「有難うございます。
今日先に兄上の紫微中代しびちゅうだいにご挨拶に上がりました

のでついつい遅くなりました。お許し下さい。」


とこれ又立派なもの言いに
大人になったのを感じ
感無量でした。



真心のささやきを貴方へ❤️





野口家さまの二連の献花






白紫陽花