ケータイの中身が全部消えてしまった為に酔いは一気に醒め、あたしは残ったメール履歴だけを頼りにみんなに連絡先を教えてもらいまくった。それでも大半以上はわからなくなってしまった。

当初の予定では、タカシの連絡先を消し、更にアドレス登録されていない番号からは拒否をするという規制をかけようと思っていた。そうすれば、タカシからは一切連絡が取れないし、あたしもわからないので縁を切るにはちょうどいいと思ったのだ。しかし、そうもいかなくなった。登録数が少なすぎる。この状態で規制をかけてしまっては、仲のいい友達以外はほとんど拒否してしまうことになる。あたしは自分をバカだと罵りながら、規制をかけるのをあきらめた。


その週明け、タカシから怒りのメールが届いた。この間の態度は何なんだとかいうクレームだった。あたしはひたすら無視をし、さっと目を通しただけで即座に削除した。

それからしばらくタカシからは何も連絡がなかった。そしてあたしは以前よりもタローやシンヤと仲良くなった。次第にタローからメールが頻繁に入るようになってきた。特に用もないのに、「今日はどんな1日だった?」などというメールが。以前、酔った時にタローは「しばらく彼女がいないから寂しい。俺と付き合う?」みたいな事を言った事がある。でも、タカシと別れて1~2週間でまだ怒りが冷めきってないあたしは「めんどうだからしばらく彼氏なんていrない」と断った。すると、「じゃぁ、もし彼氏が欲しいと思ったら俺の事も考えてみて」と言った。はいはい、と流してその場はやり過ごした。頻繁に入ってくるメールに、元々そんなにマメではないあたしは少々うんざりしていた。

ある時、タローからメールで今何をしてるか聞かれ、夕飯を作っていると返信した。「今度俺にも作ってよ」と言われ、家事が得意ではないあたしは「彼女じゃないんだし、ヤだ」と答えた。それが気に障ったんだろう、「そんな事は言ってない。ただ、仲良くしたいだけなんだ。でも、もしそれが迷惑ならごめん」というメールがきた。「迷惑ではないんだけど、知ってるようにあたしは今彼氏なんか欲しくないし、家族以外の人の為に料理をしようと思う気すらない」と返信した。

それからタローからはたまにメールが来る程度になった。それでよかった。でも、泊まりに行くと、2匹の犬に挟まれて寝ているあたしの足をタローが触っている事にあたしは気づいていた。いやらしい感じではなく、なでるというか、まるで恋人を寝かしつけるかのようだった。どう対応していいかわからず、あたしは寝たふりをし、そのうち本当に寝てしまっていた。


シンヤからもメールが入ってきて、「もっと俺たちの友情を深めようよ。俺はタカシよりマミヤが好きだよ」と言われた。タカシの事は思い出したくもないほどだったが、『タカシより』と言われるのはいい気分ではなかった。タカシがいなければあたしたちは会う事もなかったのだから。全てはタカシのおかげだった。それをそのままシンヤには伝えた。友情を深めようと言われたものの、あたしは妹の挙式が近づいていたので、その手伝いでとても忙しかった。シンヤからの誘いを数回断った。

その挙式のため、日頃貯蓄を一切しないあたしは祝儀を貯める必要があった。あたしは家で酒を飲まなくなり、更に週末飲みに出る事もしなくなった。酒をやめた訳ではないのだが、ムダに飲む事はやめた。そのせいか、最初はやはり寝れなかったりしたけれど、そのうちにそれも慣れていった。いい傾向だと思った。

あたしとタカシは以前のように2人でバイクに跨り、いろんなところへ出掛けた。あたしはタカシの後ろが大好きだった。

GWを利用して四国を一周したりもした。行き当たりばったりで、でも行きたい所には行く。対面通行の高速道路を走行中、タカシの顔にカメムシが激突し、そのあまりの臭さに高速にも関わらずバイクを停車して泣きそうになりながら顔を拭いてるタカシを見て大笑いしたり、水族館で同じ魚の写真を何十枚も撮ってみたり。

人から物をもらうのが気が引けるからあまり好きではないあたしにとって、どこかへ連れてってくれるのはすごく嬉しい事だった。


夏前、あたしたちは数時間ほどバイクでお散歩に出掛けた。遅い昼食のために寄ったお店で、タカシはつい最近起こったショックだった出来事について話しだした。


タカシにはトシというバイク乗りの友達がいた。トシはおとなしいタイプで、そしてとてもやきもちやきだった。トシは元々タカシの親友の同級生だったのだが、ヘルメットとサングラスをつけた状態がタカシとそっくりだったこともあり、2人はとても仲が良かった。顔立ちと同じように、性格も良く言えば優しい、悪く言えば優柔不断な人だった。

トシには好きな女の子、ユカリがいた。ユカリはトシのバイクの後ろによく乗せてもらってはいたが、2人は付き合ってる訳ではなく、どうやら一方的なトシの片想いのようだった。


その夏の終わりにあるイベントのためにタカシはチラシを配らなければいけなくて、チラシを貼らせてくれるお店に詳しいユカリはタカシに協力してくれることになった。トシとユカリが付き合ってないとわかっていても、トシがユカリを好きな事を知ってるタカシは、トシにユカリを借りる旨を一言断ったらしい。トシも了承したと。

しかし、ユカリを借りた後、トシはタカシに怒りの連絡をしてきた。「俺が好きなのを知っていてどういうつもりだ」と。どうやらトシはタカシとユカリがヤったと思ったらしい。タカシは身に覚えがない事を友達から疑われた事がとてもショックだったようだった。俺をそんな人間だと思ってたのか、と。あまりの腹立たしさにタカシはトシとの縁を切った。


あたしは自分がマイコから言われた「人の彼氏に近づかないで」という言葉を思い出し、タカシの気持ちが痛いほどよくわかった。自分が信じていた友達から疑われる事ほど悲しい事はそうそうない。

タカシとトシの双子のような仲良しコンビが見られなくなるのは寂しかったが、あたしはタカシが悪い事をしたとは思わなかった。タカシの性格上、友達付き合いをやめるのは仕方のないことだった。


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