長いですが、最後まで目を通せば、昨年の大統領選挙のトランプVSバイデンのどちらも「シオニストの紐」がしっかり首根っこについている点では大差ないことがご理解いただけるかと。
アメリカ国民に媚を売るよりも、イスラエル政府上層部に媚を売った方が大統領にはなりやすいのかもしれない、と思えるほどです。
私がどちらにもまったく期待していないのも、選挙で(不正・公正は問わず)は何も根本的には変わらないと考えているのは、これも大きな一つの理由です。
またトランプ大統領は退職直前にも、さらにとんでもなく大きな爆弾を置いて行きました。。。
1月16日
「トランプ大統領はワシントンで親イスラエル派のロビイスト数名と話し合いをした後、今回の件に関する命令を下した、と国防総省が金曜に発表」(英語のニュースより一部翻訳引用)
つまり今後、中東地域における米軍の中枢部(アメリカ中央軍、CENTCOM)にイスラエルが公に影響力を持つようになったということです。
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イスラエルにおけるトランプ大統領のレガシーと熱狂的な支持の理由
Trump’s Legacy in Israel
2021年1月12日【TheNew Yorker】https://www.newyorker.com/news/dispatch/donald-trumps-legacy-in-israel
・イスラエルのゴラン高原(以前はシリア高原と呼ばれていたが、イスラエルが武力で占領した地域)の一部には、トランプ高原(Trump Heights)という町がある。
・アメリカ大統領選挙に先立った11月の世論調査によれば、イスラエル人の63%はトランプ大統領を支持していたことがわかる。
★ゴラン高原に「トランプ高原」が現れる
(画像:トランプ高原の看板、 Ammar Awad / Reuters )
殺伐としたゴラン高原の片隅、シリアの首都ダマスカスから南西へ64㎞ほどの地点に巨大な看板が立てられていた。1967年にイスラエルがシリアから取り上げたこの地域におけるイスラエル政府の領土権をドナルド・トランプが認めたことを記念して名付けられたイスラエルの町、トランプ高原(Trump Heights)の看板である。
2019年の夏、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこの町の設置を祝うイベントについてカメラの前で明らかにした。元在イスラエルアメリカ大使のデビッド・フリーマンはそのイベントで、トランプは「イスラエルにとっての英雄の幹部」であると話している。1年半後の時点でこの町にはまだ入居者はいないが、1月の終わりにはこの町の仮設住宅に20世帯の住民が入植する予定となっている。
紛争の火種となっているこの辺鄙な場所の集落に設置されたトランプの名前の巨大な看板は、上記の儀式で強調されていた通り、トランプ大統領がイスラエルに残したレガシーを十分に象徴しているといえる。在NYのイスラエル元総領事アロン・ピカンスは「イスラエル国内におけるアメリカの政策は完全に象徴的なものだ」と私に話してくれた。
★米国大使館をエルサレムに移転
(画像:リンク:エルサレムに建設された新米国大使館建物)
イスラエルにとっては、象徴性が重要である。イスラエルの首都はエルサレムであるとトランプが認めた時点で、エルサレム東部がパレスチナ人に属する国家でありえる可能性を潰したように。2018年、トランプ大統領がテルアビブにあった米国大使館をエルサレムに移転させた際は、パレスチナ人との間の交渉は形式上のものすら行われなかった。
ネタニヤフ首相がこの地域における包括的な平和計画を採用するためのきっかけとしてこれらのジェスチャーを利用するのではなく、トランプは単に他の選択肢を与えなかっただけなのだ。
(画像:2017年に、トランプ大統領が現職のアメリカ大統領として初めて嘆きの壁を訪問した際の写真)
★中東でのイスラエルの外交拡大のための協力とUAEへの戦闘機輸出
この数か月の間、アメリカはイスラエルやアラブ首長国連邦、バーレーン、スーダン、さらに最近追加されたモロッコの間における公式の協定を仲介していた。その際、トランプはネタニヤフによるウェストバンク(ヨルダン川西岸地区)の一部を併合する過激な計画を延期させることを条件に、これらのアラブ諸国との外交関係を持つ報酬をイスラエルに認めた。
何年もの間、イスラエルはそのような国との間の外交は秘密裏に行っていたが、それはパレスチナ人国家に対しイスラエルが前進し続ける態度に固執していたためである。しかし今、イスラエルはその併合を延期することを公式に誓った。
そして非公式レベルでは、上記アラブ諸国に旨味のある協定を正常化させるような斬新な対策にトランプ政権は同意した。特にアラブ首長国連邦との間では、230億ドル相当の兵器取引(ステルス戦闘機F35を50機)の申し出が挙げられる。
イスラエルのTV局チャンネル12の政治分析主幹アミット・セガール:「ネタニヤフはトランプから望めるものをすべて手にした」
★トランプを熱愛するイスラエルの右派
(画像:リンク:エルサレム旧市街のお土産店店頭にあるユダヤ正教の格好をしたアメリカ大統領のTシャツと警備で回る兵士)
米国大統領選挙に先立って11月に行われたイスラエル民主主義研究所による世論調査では、イスラエル人の63%がトランプを支持し、ジョー・バイデンを支持したものはわずか17%にすぎなかった。これはトランプとネタニヤフの連携はあまりにも完璧だったためだろう。もしイスラエルがアメリカ国内の州であったとしたら、イスラエルは「国内でもっとも赤い州」となっただろうと左派系新聞のHaaretzはコラムで述べている。
イスラエルのTV局の分析家シモン・リクリン:「尊敬に値するトランプ大統領へ。アメリカを偉大かつ強力にするためにあなたが行ったすべてのことに感謝します」ネタニヤフ首相の熱烈な信望者のツイートにも、同様にトランプ大統領への称賛が目立つ。
アメリカ大統領選挙から3週間後、著名な評論家で元右翼議員のイノン・マガル氏はイスラエルのラジオで、次のように語っている。「フレッドの息子、ドナルドがこの選挙に勝つよう私たちは今でも祈っています」
そして日曜日にトランプ大統領の支援者らが群衆となって米国議会議事堂を襲撃した直後、右翼のコメンテーター、ガディ・タウブ氏は毎週行っているポッドキャストを「なんて恐ろしいことだ!」という言葉から始めた。その後、それはトランプ大統領がツイッターから排除されたことに対してであると説明した上で、「スターリン時代のような雰囲気だ」と説明。「アンティファのアカウントは排除しなかったくせに!」と続けた。
(画像:リンク:トランプ大統領を熱烈に支持するユダヤ系のグループ)
イスラエル人のトランプ熱は、ネタニヤフ支持の視点があからさまなフリーペーパーIsrael Hayom (“イスラエル・トゥデイ”)でもっとも顕著にみることができる。大統領選挙当日、創設者の妻ミリアム・アデルソンは見出し記事に「恐れる必要はない」というコラムを執筆。そこで彼女は「アメリカ人のほとんどはトランプの第二期を望んでいることが、投票の集計からそれが明らかにされることを心から望み、信じている」と記していた。その後、米国国会議事堂への襲撃があった日には、同紙上で「就任式までには、民主党とメディアはトランプの首を狙いそうだ」と主張している。
前述のIsrael Hayom誌編集長のボアズ・ビスマス:「トランプ氏を見ると、私にはまずパワフルな男性が見えた」「私は最初から同氏に好感を持っていた」
★ネタニヤフとトランプの類似点
トランプ主義(Trumpism)とネタニヤフ主義(Bibism)の間には、見間違うことのできないほど類似点が多く存在している。
★パレスチナ人への迫害強化
イスラエルの右派がトランプを支援する大きな理由は、依然としてパレスチナ人が居住している事実を無視してヨルダン川西岸地区への新たな入植を支持する意志があるためである。
大統領選挙の数日前、ヨルダン川西岸のヘブロン市で行われたトランプのための祈りの式典の間、入植者のリーダーの一人が次のように話している。「(トランプ政権中は)提示された新しい建築計画が認可された。オバマ時代には夢にも思わなかったことだ」イスラエル右派はまた、トランプ政権ではパレスチナ人に対する軽視がより幅広く行われるようになった点も高く評価している。
トランプ大統領による、イスラエルとパレスチナの間の和平計画について同氏は同地域における「世紀の取引(deal of the century)」と呼んだ。しかしそのプロセスで、同大統領はパレスチナ人に説明会さえ行うことなく、まるで彼らの存在を疎んでいるかのようであった。それに対し、パレスチナ解放機構のムハムード・アバス議長は、トランプの計画を「世紀の侮辱(slap of the century)」と呼んでいる。
「世紀の強奪(Steal of century)」トランプがパレスチナ・イスラエルに起こした大惨劇 ドキュメンタリー
トランプ政権の下で望むことがすべて手に入れられたにもかかわらず、イスラエルの極右は依然として大統領の「協定」を拒否したのは皮肉なことだ。彼らはパレスチナ国家を言及することに反対したのだ。たとえ治安上の自治権もなく、ユダヤ人入植者によって浸食されることになるほど矮小なものであっても「パレスチナ国家」は認められないという。
もしトランプが第二期も当選していた場合、イスラエルによるヨルダン川西岸居住区の併合を同大統領は認めていたはずだと前述のビスマス氏は考えている。彼の言葉で言えば、「ユダヤ・サマリア(Judea and Samaria、ヨルダン川西岸地区を含む地名で、特にシオニストは好んでこの名前を使う)への私たち(ユダヤ人)の主権を(トランプは)認めただろう」ということだ。
ビスマスはまた、湾岸諸国がパレスチナよりも事実上イスラエルを選ぶよう、トランプが働きかけたことを評価している。
ビスマスは、「イスラエルは、アラブ世界にとっての愛人となるべきではない。妻であるべきだ。そしてトランプ氏はイスラエルがアラブの妻に援護をしたのだ」と考えている。つまり、「『イスラエルは本当のところはOKなのだ。イスラエルの成功や存在、繁栄する能力はパレスチナとは無関係だ』と言ってくれるアメリカの大統領が突然現れたようなもの」だということだ。(中略)
アラブ首長国連邦に対する最新兵器輸出への計画のニュースに対し、ネタニヤフは知らなかったと話してはいるものの、事前に知っていたことを示唆する情報もある。イスラエルの退役したギレアド将官はF35の輸出には賛同するが、これを「神聖なルールの違反」と呼んだ。この動きは中東におけるイスラエル政府の質的な優位性を支援するためだ。ギレアド元将官はさらに、「アメリカがアラブ首長国連邦に兵器を売りつけたのであれば、つまり他の国に販売してもよいということになる」とし、「そうならないことは誰にも保証できない」と続けた。
ネタニヤフの元国家安全保障顧問であり、その後ネタニヤフに批判的になったウジ・アラド氏は、この地域でのトランプの努力は間違ったジェスチャーであり「無駄なもの」と述べた。同氏いわく、エルサレムをイスラエルの首都として認めるよりも、シリア国内におけるイラン軍の陣地に対抗する必要性の方がはるかに上だという。
【関連記事】2021年1月13日
「イスラエルが米国諜報機関との連携により、『ここ数年で最も激しい空爆』をシリアに対して行う(Israel Launches "Deadliest Airstrikes In Years" On Syria With US Intelligence Coordination)」
オバマ元大統領はイスラエル人全般からはあまり人気がなかったが、バイデンは同じような残念な評価を避けることができるかもしれない。イスラエル評論家数名に聞いたところ、バイデンの時としてやりすぎな温かさや即興でのスピーチはイスラエルと長期間良好な関係を築くために役立つ可能性があるという。(バイデンの子供は3人全員がユダヤ人と結婚していて、かなりユダヤなファミリ―であるという事実も、妨げにはならないだろう)
【関連記事】「なぜバイデンの子供全員がユダヤ人と結婚しているのか」
Why Did All of Biden’s Children Marry Jews?
2020年11月5日https://nationalvanguard.org/2019/11/why-did-all-of-bidens-children-marry-jews/
ジョー・バイデン:「私はシオニストです。ユダヤ人でなくてもシオニストにはなれます」
Joe Biden: "I Am A Zionist. You Don't Have To A Jew To Be A Zionist"
ネタニヤフの元国家安全保障顧問であったアラド氏は、2010年、ネタニヤフ首相の代表団の一員としてホワイトハウスを訪問した際の出来事について語った。
廊下で当時副大統領であったバイデンと歩いていたところ、バイデンはアラドに対し、「ここでは私がウジさん(アラド氏)にとって一番の友達だってこと、覚えておいて下さいよ」と話したという。友好的なジェスチャーに感謝したアラド氏はそれを、「オバマはイスラエルに対してテクニカルな対応をしているが、バイデン自身はもっと心から賛同してくれる」ものと解釈したのだ。
バイデンの国務長官の人事を見るだけでも、民主党と右派系イスラエル人の間が和解できる可能性は十分にありえることがわかる。
オバマ政権時代に国家安全保障副顧問を務め、新バイデン政権で外交関係の長官になることが予想されているアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)は、2014年に開始されたガザへの攻撃の際、イスラエルのミサイル防衛システムの補充を確保する任務についていたと伝えられている。
在アメリカのイスラエル大使ロン・ダーマ―がブリンケンに夜中に電話をし、さらに多くの迎撃機の資金提供を(イスラエルに対して)行うよう要望したが、このエピソードはブリンケンが好んでよく話しているものだ。ブリンケンが大統領執務室に急いで行くと、そこにはオバマとバイデンがいて、ブリンケンに「そうするように」と言ったとされている。当時、国防歳出小委員会の委員であったスティーブ・イスラエルによれば、その際の資金に対する議会の認可は「今まで見たことないような早さで」行われたとしている。
ネタニヤフ首相がバイデンと長年の付き合いがあることを言及した際、同地域での中東和平特使であるマーティン・インディク氏は、ツイッターで次のように述べている。「ネタニヤフ首相がバイデン大統領のことを40年近く知っていることは真実だ。しかしまた、バイデンがネタニヤフを40年近く知っているということも真実だ」
(抄訳終了)