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【永田町情報】 ★田中防衛相が政権を衰弱させる 時事通信社解説委員・田崎史郎

川口市議会議員の若谷正巳です。


~時事通信~


【永田町情報】 ★田中防衛相が政権を衰弱させる 時事通信社解説委員・田崎史郎

 防衛相・田中直紀の言動には、目も当てられない。田中に対する評価は従来「人柄が良い」「実に温厚」。それ以上でも、それ以下でもなく、人柄が良いというのは政治家にとって決して褒め言葉ではない。

 大臣就任まで田中が政策面で何かを成し遂げたという姿を見た人に出会ったことがない。ゆえに、田中が防衛相就任の報が流れると、あちこちで驚きの声が上がった。でも、起用する以上、人事権者の首相・野田佳彦には田中が防衛相にふさわしいと判断する、何か理由があるのだろうと注視していたが、結果は見ての通りだ。


◇田中を防衛相に起用した理由

 内閣改造・民主党役員人事が行われた先月13日朝、民主党幹部の携帯に電話がかかってきた。野田からの電話だった。

 「防衛大臣は田中直紀さんにしたい」

 「えっ、大丈夫ですか」

 「彼は、参院で外交防衛委員長という重たい役職を経験している」

 「でも、本当に大丈夫なんですか」

 「自民党時代、沖縄問題の解決に当たってきたのは田中派の人たちだ。その面でも期待できる」

 野田がここまで言うに及んで、この幹部はこれ以上、野田をいさめるのを諦めた。田中起用の背景を取材すると、民主党幹事長・輿石東は田中の入閣を要請しただけでポストを指定しておらず、防衛相に就けたのは野田だ。だが、野田の認識はちょっとずれている。

 国会の事情に精通している方なら分かるが、委員会の委員長は国会の事務局のお膳立てに沿って議事を運営し、政治家や官僚の名前を覚えていれば良い。極論すれば、漢字が読めれば務まる。

 また、沖縄問題に関わってきた政治家は元首相の橋本龍太郎、小渕恵三、元官房長官の梶山静六、野中広務ら確かに田中・竹下派に属した人たちだが、直紀の義父である元首相・田中角栄の人脈が引き継がれたというわけではない。橋本、梶山らには戦前、戦中世代ならではの沖縄に対して申し訳ないという熱い思いが根底にあったから、基地問題の打開に精力を傾けた。

 このように検証すれば、野田の起用理由はいずれも間違っている。大臣就任後の田中の振る舞いを見れば、人事ミスは明らかだ。6日の参院予算委員会で、たちあがれ日本の片山虎之助が「首相は人事が下手だ」と酷評したのに対し、野田は「適任と判断したつもりだ。捉え方はいろいろあると思うので、批判は甘んじて受けないといけない」とつらい答弁をせざるを得なかった。


◇人事の心得も工夫もなく…

 田中に対して、野党は参院で問責決議案を当分提出しない方針だ。田中の言動がメディアで面白おかしく取り上げられるたびに、なぜこの人が防衛相なのかという疑問が湧き、野田の任命責任が自然と浮かび上がる。それは、内閣支持率の低下要因となって、政権の勢いをそぐことにつながる。

 人事を行う場合、そのポストの役割を十分に認識するとともに、人事の対象となった人物の資質を見抜くことが人事権者の心構えである。防衛相は国の防衛に当たる責任者であり、外国の防衛担当首脳との会談に臨まなければならない。外国から軽んじられると国の威信に関わる。また、組織のトップに立つ者は普段から構成員の資質に目を凝らしてどんな人物なのかを見極めていなければならない。

 先の内閣改造で異動対象となった民主党議員で、防衛相にふさわしい人はいた。当時、文部科学相で、今回、防災担当相として再入閣した中川正春だ。中川は文科相就任直前まで党の外交・安全保障調査会長を務め、一昨年暮れの防衛計画大綱づくりにも関わっている。

 内閣改造で中川を防衛相に横滑りさせ、田中を国家公安委員長などに起用しておけば、こんな痛手を負うことはなかったであろう。中川を再入閣させたのは人事ミスを認めたようなものだ。

 だからといって、いまさら田中を代えるわけにもいかない。もし、代えたら妻の元外相・田中真紀子が黙っていないだろう。田中起用の失敗が政権を苦しめ、衰弱させるに違いない。(敬称略)(了)

(2012年2月13日配信)