若戸仁のひねくれ日和
近場で遠出をしようって 訳のわからない日本語で
日常から少し離れて 見たことのない景色に出会う
「空が広い」なんてベタなことを言うから
笑って 見上げて 笑って 何かに気付く
もっと広い空を そういえば知っている
不意にノスタルジー
目と口が 閉じることを忘れ
思い出しているのか 思い浮かんでいるのか
はっきりしてはくれないか?
平たい石を探して拾って 振りかぶってサイドスロー
向こう岸までたどり着いたら それはもうヒーロー
日が暮れたって構わずにいた彼らは
笑って 笑って 笑って 家路に就いた
今じゃ 手が汚れるからって 石も拾わない
不意にメランコリー
目を閉じて 開ければもう明けて
「長い人生」なのか「人生は短い」のか
はっきりしてはくれないか?
いつもより広い空 河川敷の砂利道
突き刺さる冬の風 羊の焼ける匂い
漏れ届くチャイムの音 口を衝く流行りの歌
襲われればもう 勝ち目に欠ける
不意のノスタルジー
もう来たのか 今から来るのか
確かなのは 今ここにはいないこと
今か今かと 僕の隣を空けておいたのに
待っているのが疲れたのなんて
耳の内側で響いた声は
僕のものか それとも君か 春か
名残惜しいとか
一緒にいたかったとか
そういうことじゃなくて
新しい彼には言えないことを
ぶつけたいだけ
「八つ当たりだ」って
声は 春か 気弱な 君が悪い
カレンダーを眺めて 改めて
まだ諦めたくないって気が付いて
北向きの電車を乗り継いで行ったのに
終点で降ろされた僕は
次の日始発で帰ることにした
出会うべき場所は まだ遠く 遥か
戻った僕に
「昨日までいたのに」って
絵に描いたすれ違い
新しい彼が代わりに
意地悪に笑っているから
「八つ当たりだ」って
殴りかかる僕は 君が悪い
いつものように ただ見上げただけ
無くて七癖 その七分の一
晴れ過ぎてたその日は
そこが空なのか青なのか わからなくなった
二ページちぎれて飛んでった 国語辞典
二ページ分軽くなったと笑って
歩くことを思い出した
雲を掴むような話だって?
それは大変だと クロールする目
浮かんでたその雲は
えらく立体的で 距離感がわからなくなった
手を伸ばせば届くし 届けば掴める
一ページ破り捨てたら笑って
無くて七癖 その七分の一

