宮沢賢治の愛した音楽と弦楽合奏 | 音さがしケイビング

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未知の洞窟に降り立ち、ひょっとするとあるかも知れない美しい鍾乳石を求めて、
探検するような気持ちで書く、音楽日記。
未知の音楽を求め続ける楽しさ、音楽を通して出会う人から学ぶ楽しさがテーマです。

賢治のバイオリン音楽会は、

宮沢和樹さんの 解説と 

娘さんによるバイオリンと 奥様によるピアノ、

息もぴったりの

とても素敵なコンサートでした。


賢治が自分の詩に自分で曲をつけたもの、

讃美歌の旋律に 自分の詩をつけたもの、

賢治が好きだったアイリッシュ民謡・・・

賢治の愛した音楽に こうして触れることができて

本当に感激しました。


賢治の所有していたバイオリンの音色は、

とても素朴なのだけど

しっかりした いい音でした!


宮沢香帆さんの演奏、

あたたかくて 素晴らしい音楽でした。

いつも弾いている楽器と違って、

きっと弾きにくいだろうし、

たくさんの方の前で

きっと とても緊張したでしょうけど

親子で見事な演奏を聴かせてくださって、

本当にありがとう!

ブラボー!!! でした。


花巻にある宮沢賢治記念館に、

賢治が愛用したセロと

妹トシのバイオリンがあることは

今ではよく知られています。

国産のスズキバイオリン製。

外国の質の良い楽器などは

まだ日本に入りにくかった時代だったそうですね。


わたしは、そこにチェロとバイオリンが一台ずつ

残っているだけかと

思っていたのですが・・・違いました。

賢治は、実は複数の弦楽器を購入して持っていたんですって。


宮沢家には、他にも ビオラが二台あり、

そして 今回 京都に持ってきてくださった 賢治所有のバイオリン・・・

(  記念館にあるトシさんの バイオリンと別の物 )

そう、賢治は 弦楽四重奏がやりたかったみたいです。

そうだったんだ~ 知らなかった~。


和樹さんがお話の中で

賢治が好きだった蓄音機の音源

その雑音だらけの味わい深い音色を

録音で聴かせてくださったのには

たいへん 感慨深いものがありました。


曲はバッハのG線上のアリア。

これが、バイオリン主旋律じゃないんです。

なんと、チェロの神様ともいわれる

カザルスのチェロがメロディーを奏でる

弦楽合奏のアリアでした!

だから バイオリン主旋律のト長調でなく、

チェロバージョンの ハ長調で演奏されていました。

雑音だらけなのに どうでしょう・・・この感動は。

やはり 賢治さん・・・大のチェロ好きだったのですね。


ピアノがうますぎる 香帆さんのお母様は、

岩手の高校で国語の先生をされているそうです。

賢治が愛する妹の死と向き合った詩

「永訣の朝」を朗読してくださいました。

 娘さんのバイオリンと 弦楽合奏の伴奏によるG線上のアリアにあわせて。

音楽とよく合うように かなり読み込んで練習もされたそうなのですが

それはそれは見事な朗読でした。

この朗読を 泣かずに聴くことはもう 不可能。

みぞれっぽい雨が降り続く

吹き抜けホール ガラス張りの大きな窓から見える

北野の空が 岩手の空と重なって

わたしは 涙でぐしょぐしょになりながら

この詩を聴きました。

深い悲しみの中に 愛情があふれた素晴らしい詩です。


この詩は、G線上のアリアの旋律にのせて

賢治が作ったものだろうと

宮沢家のみなさんは

確信に近い思いで話しておられました・・・

わたしも演奏と朗読を聴いて そうに違いないと思いました。


法華経を信仰した賢治でしたが、

讃美歌にも親しみ、西洋音楽をこよなく愛したとのこと。

ベートーヴェンがとても好きだったそうです。

そして、特に弦楽合奏を

身近な人達と楽しみたいと願っていたようです。


科学、絵画、文学、音楽・・・

たくさんのことに精通し

素晴らしい詩や文学作品を生み、

その生涯が とても短いものだったと思えないほど

深い洞察力をもって

人間としての あるべき姿を

自ら求め続けた人。


宮沢賢治という作家の

さらなる魅力を 心いっぱいに感じた演奏会でした。


宮沢家のみなさま、

この演奏会を企画・運営してくださった多くの方々に

心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。


※ なお この音楽会の様子は、後日ネット配信で見られるそうです。

  興味のある方は、仏立ミュージアムのホームページを

  のぞいてみてください。

※  ところで賢治のチェロの音を聴きたい・・・と思っているのは

  もしかすると 私だけではないと思うので、ご参考までに・・・

  これは プロの方の演奏された録音で 聴くことができます。

  花巻のほうでは 時々演奏会も開かれているそうです。

  花巻の演奏会の録音は 昨日の会場のBGMにも使われていました。

  チェリストの藤原真理さんが演奏するトロイメライ♪

  とっても素敵な音色でした。 感動!

  わたしも いつか 生の音で聴いてみたいです。

  ( 今回の展示を解説した図録が刊行されており 付属のDVDに

   その素敵な録音が入っておりました~♪ ご参考ください。)