刑の一部執行猶予を活用して、きめ細かい更生保護を! | 若狭勝オフィシャルブログ「法律家(Lawyer)、議員(Legislator)、そのL字路交差点に立って」Powered by Ameba

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昨日3/3(木)、私が評議員を務める更生保護法人両全会等主催の
「薬物乱用問題対策関係者会議」が都内で開催され、出席してまいりました。

覚せい剤使用などの薬物犯罪は、逮捕・服役後も、再び薬物に手を出してしまう
再犯率が高く、社会への害悪はもちろん、薬物乱用者本人の更生の観点からも
大きな問題となっています。

従来、薬物使用の罪で裁判にかけられて有罪になると、例えば、2年間の刑期全てを
刑務所内で過ごすか、あるいは、刑に執行猶予が付いて、丸っきり刑務所へ行かず
にすむかの二者択一、オール・オア・ナッシングでした。

ところが、刑期を終えてシャバに出ると、苦しかった取調べ期間や刑務所でのことを
すぐに忘れて薬物に再び手を出したり、執行猶予が付いて裁判が終わったその足で
薬物を手に入れに行く者もあります。

そこで、二者択一のペナルティではなく、グラデーションをつけた段階的な刑のメニューを
設けようというのが、来年から施行される「刑の一部執行猶予」の制度です。

例えば、2年の実刑判決を受けた者でも、そのうち1年6か月だけ刑務所内で過ごさせ、
残り6か月について刑の執行を猶予して、刑務所から出し、外の社会で過ごさせる、
というものです。

特に薬物犯罪の場合、再犯率が高いことを考慮し、
外へ出る際、必ず保護観察を付けるのが、この制度のミソです。
つまり、残りの刑を猶予した者を一人で放っておかず、保護司の監督下に置き、
定期的に保護司に面談させるなどして、きめ細かく社会内での更生を助けよう、
というものです。

ところが、現在、保護司の数が足りず、十分な保護観察の運用が難しい状況にあります。
保護司は、例えば、引退された自治会長さんなど、いわば地元の名士といった
人格・識見にすぐれた方々に、ほぼボランティアでお願いするのが通例でした。
そのなり手が今、少ないのです。

せっかく、良い制度、器を作っても、それを実際に動かす人材を得られなければ、
画竜点睛を欠きます。
本来、そういうところへ国の予算や人員を割くべきであり、
それを実現するのが政治の役割だと思います。

もちろん、国や自治体だけでなく、民間を含めた関係各団体との連携が必要ですが、
まずは今回の会議を後援する法務省や厚労省等のバックアップが不可欠であり、
次長検事が列席した最高検など刑事司法の現場の活躍にも大いに期待したいです。