《新古今和歌集・巻第十・羈旅歌》
909
題知らず
菅原輔昭(すがはらのすけあき)
まだ知らぬ故郷人(ふるさとびと)は今日までに来(こ)んと頼めしわれを待つらん
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
題知らず
菅原輔昭
帰れないでいることをまだ知らない故郷の人は、
今日までに帰ってこようと約束した私を、
待っていることであろう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;題はつけないでおきます。
作者;菅原輔昭
故郷の人は
(私が帰らない、または、帰れないことを)
まだ知らないのだ。
「今日までに戻ってくる」
…そんなふうに
期待させた私のことを
信じて
待っているのだろう。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
この歌のように
ボヤッとした訳しか出ない場合、
何か背後に事情があるはず…。
そう思って調べましたが
作者の背景が分かる資料が見つけられず、
なぜ、「まだ故郷に帰れない」と言っているのか
不明です。
菅原輔昭(すけあき・すけあきら):生没年不詳。
父は、菅原文時(=菅原道真の孫)。
975年「一条大納言為光歌合」、
977年「三条左大臣頼忠前栽歌合」に参加。
982年出家。
中古三十六歌仙。
まだ:まだ。いまだ。
しる:愚かになる。ぼける。ぼんやりとなる。物好きである。いたずら好きである。
しる:理解する。わきまえる。経験する。体験する。世話をする。面倒をみる。交際する。つきあう。分かる。世間に知られている。
しる:統治する。治める。領有する。
ふるさと:古都。旧跡。生まれ故郷。古くからの馴染みの土地。もとの住居。自宅。住み慣れた所。
ふる:古くなる。年をとり老いる。昔馴染みである。
ふる:降る。涙が流れ落ちる。
ふる:さわる。触れる。男女が慣れ親しむ。関係する。少し食べる。
ふる:震動する。
ふる:振り動かす。顔を背ける。相手にしない。
ふる:経る。
ふるさとびと:ふるさとの人。昔馴染みの人。
ひと:人間。世間の人。大人。立派な人。人柄。性質。身分。他人。あの人。従者。あなた。
けふ:今日。
げふ:仕事。職業。
まで:〜まで。〜ほど。
まで:詣で。参上する。伺う。参詣する。
まて:待て。
く:来る。
む:〜だろう。〜よう。〜がよい。〜ませんか。〜ような。〜としたら。
たのめ:頼りに思わせること。あてにさせること。期待させること。
たのむ:手ですくって飲む。
たのむ:期待する。あてにする。主人として仕える。身を託す。信頼する。
われ:わたくし。自分自身。おまえ。
わる:砕ける。裂ける。割れる。分かれる。別々になる。心が乱れる。思い乱れる。秘密がばれる。露見する。押し分けて前に進む。打ち破る。
まつ:松。永久不変。待つ。
まつる:差し上げる。たてまつる。召し上がる。お〜申し上げる。
らむ:今ごろは〜ているだろう。どうして〜のだろう。〜とかいう。〜ような。