《新古今和歌集・巻第九・離別歌》
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修行(すぎやう)に出(い)で侍りけるによめる
大僧正行尊(ぎやうそん)
思へども定(さだ)めなき世のはかなさにいつを待てともえこそ頼めぬ
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
仏道修行に出ました時に詠んだ歌
大僧正行尊
帰る時を約束したいとは思うけど、
無常の世がはかないので、いつを待てとも、
約束してあてにさせることができないのだ。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;仏道の修行に出た時に詠みました歌。
作者;行尊
(私はこれから修行の旅に出ます。)
また逢えることを願うけれども、
この世は
無常で変わりやすいものだし、
人生もまた、
弱々しくあっけないものです。
人生も
修行の終わりも
思い通りにならないのだから
「いつまで待っていておくれ」などと
期限を決めることはできませんよ。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
行尊:1055年〜1135年2月5日(享年81)。
平等院大僧正。
1070年頃から大峯山などで修行。
1125年から大僧正。
おもふ:思う。考える。思案する。愛しく思う。恋をする。懐かしく思う。回想する。望む。願う。希望する。心配する。悩む。嘆く。苦しく思う。予想する。〜そうな顔をする。
おもひ:思うこと。考え。希望。願望。願い。心配、悲しみなどの気持ち。もの思い。恋い慕う気持ち。思慕。愛情。予想。想像。喪中。喪に服すること。
ども:〜が。〜のに。〜けれども。〜てもいつも。〜でも必ず。
さだめなし:一定しない。変わりやすい。無常だ。
さだめ:決めること。決定。選定。議論。判定。きまり。おきて。規則。変わらないこと。安定。
さだむ:決める。評議する。相談する。判定する。しずめる。治める。
なき:亡き。無き。泣き。鳴き。
よ:現世。御代。治世。一生。生涯。寿命。世間。俗世間。時節。男女の仲。夫婦の仲。生活。暮らし。
よ:余り。以上。ほか。
よ:私。
はかなし:思い通りにならない。期待外れだ。心細い。弱々しい。もろい。頼りにならない。あっけない。無常だ。つかの間だ。たいしたことではない。幼い。未熟である。あさはかだ。みすぼらしい。卑しい。
いつ:凍りつく。いてつく。
いづ:出る。現れる。出発する。人に知られる。離れる。逃れる。〜始める。
いつ:どの時。いつ。いつも。ふだん。
まつ:松。永久不変。待つ。
とも:友人。仲間。従者。連れ。
とも:たとえ〜ても。仮に〜ても。いくら〜ても。〜ともよ。〜てたまらない。
たのめ:頼りに思わせること。あてにさせること。期待させること。
たのむ:手ですくって飲む。
たのむ:期待する。あてにする。主人として仕える。身を託す。信頼する。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
『行尊大僧正集』の詞書は、
「五月晦日ごろに、熊野へ参り侍りしに、
羽束師(はづかし)といふ所にて、千手丸が送りて侍りしに」。
「羽束師」は、京都市伏見区。