《新古今和歌集・巻第九・離別歌》
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成尋(じやうじん)法師、入唐(につたう)し侍りけるに、
母のよみ侍りける
成尋阿闍梨母
もろこしも天(あめ)の下(した)にぞありと聞く照(て)る日(ひ)の本(もと)を忘れざらなん
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
成尋法師が入唐しました時に、
母の詠みました歌
成尋阿闍梨母
唐土も、同じ天の下にあると聞いています。
ですから、天に照る日の本である日本を
忘れないでいてほしいことです。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;1072年3月、息子・成尋法師が
(日本を離れて)唐に行きました。
その時に、母が詠みました歌。
作者;成尋阿闍梨母
息子・成尋法師が赴いた唐土(中国)も
この地上界の下にあると
聞いています。
息子は
美しく輝く天照大神や天皇がいる
この日本のことを
忘れないでいてくれるだろう。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
成尋阿闍梨母:988年〜没年不詳。
女流歌人。
源俊賢の娘とされるが、
京都大雲寺の縁起によれば、堤大納言の娘とされる。
夫・藤原貞叙とは1014年〜1015年ごろ死別。
家集『成尋阿闍梨母集』は、
宋へ渡る成尋を思う母の心情を詠んだ日記的な内容。
1073年5月で終わっている。
成尋法師:1011年〜1081年10月6日(享年71)。
7歳で出家。天台宗の僧。
善慧大師とも称された。
1072年3月、入宋。
父は、陸奥守・藤原実方の子、貞叙。
母は、源俊賢の娘または、堤大納言の娘で、女流歌人。
もろこし:中国
もろ:二つの。両方の。多くの。一緒の。
こし:腰。山裾。人力で担ぐ乗り物。
こし:色が濃い。味が強い。紫や紅色が濃い。濃厚だ。情愛や関係が深い。
あめのした:天下。地上全体。日本の国土全体。この世の中。
あめのしたしらしめす:天皇が天下をお治めになる。
あめ:天。空。天上界。
あめ:雨。涙。
した:下部。下の方。地位や身分が低いこと。若いこと。能力が劣ること。内部。内側。内心。心のなか。
ある:生まれる。出現する。
ある:荒々しくなる。荒廃する。すさむ。興ざめする。
ある:遠のく。離れる。
あり:存在する。いる。ある。生きている。その場にいる。居合わせる。時間が過ぎる。経過する。栄えて暮らす。優れている。良いところがある。
きく:天皇家の象徴。
きくのしたみづ:中国の南陽・甘谷の、菊をひたした水を飲んだ人々が、みな長寿を保ったという故事による。
きく:うまく働く。役に立つ。上手である。優れている。
きく:聞いて知る。聞いて思う。聞き入れる。尋ねる。問う。味や香りを試す。匂いをかぐ。吟味する。
きく:菊。奈良時代、中国から渡来した。平安時代より秋を代表する花のひとつ。襲の色目。菊の花や葉を用いた文様。
てる:輝く。照る。美しく輝く。てり映える。
ひのもと:ひのもとのくに:日本の美称。日がのぼるもとの国の意。
ひ:太陽。日中。一日。〜の期日。天候。天照大神。天皇。
ひ:炎。あかり。炭火。火事。のろし。
ひ:氷。ひょう。
ひ:不正。具合の悪いこと。価値のないこと。
ひ:濃く明るい朱色。ひのき。
もと:根本。よりどころ。基本。根本。幹。以前。かつて。昔。原因。はじまり。起源。上の句。住所。居所。付近。近辺。元手。資金。
わす:いらっしゃる。おいでになる。
わする:意識的に忘れる。自然に忘れる。
なむ:南無。仏を信じ、それに帰依すること。
なむ:一列に連なる。並ぶ。
なむ:いまごろは〜だろう。〜ているだろう。
む:無。
む:〜う。〜だろう。〜よう。〜がよい。〜ませんか。〜ような。〜としたら。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
成尋阿闍梨母集