《新古今和歌集・巻第九・離別歌》
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題知らず
大江千里
別れてののちも逢ひ見んと思へどもこれをいづれの時とかは知る
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
題知らず
大江千里
別れてからのちも、
また逢おうと思うけれど、
逢う時をいつと知るか、
いつとも知らないことだ。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;「将来、また逢う時とは、いつだろうね」という題で
歌を詠みました。
作者;大江千里
離別したあと、
お互いにまたうまく出会う機会を得て
お逢いできたらいいな…
と思うけれども
そういう機会がいつ来るのか
分かることがあろうか。
(再会できる時がいつなのかは、
分からないものですよ。)
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
大江千里:生没年不詳。
父は、大江音人(811年生まれ)。一説では、大江玉淵。
中古三十六歌仙。
清和天皇、陽成天皇、光孝天皇、宇多天皇、醍醐天皇に仕える。
897年、宇多天皇の勅令により、「句題和歌」(大江千里集)を
献上している。
たい:からだ。ありさま。様子。本体。本質。
たい:対等であること。優劣がないこと。
だい:位や家督などを継いだ順序。
だい:大きいこと。多いこと。広いこと。
だい:位や家督を継いでその地位にある期間。天皇の御代。代わり。代償。代理。
たいし:皇太子。
だいし:菩薩。出家した女性。高徳の僧。
だいじ:重大な事件。大事件。出家すること。たやすくないこと。大切なこと。手厚く扱うこと。菩薩の大きな慈悲。
しらず:わからない。検討がつかない。〜はともかく。〜はいざしらず。
わく:区別する。判断する。別々にする。区切る。分配する。押し分けて進む。
わかる:別々になる。分離する。離別する。死別する。
のち:あと。以後。次。将来。未来。子孫。末裔。死後。来世。のちの世。
のちのおや:実の親が死んだあと、親として頼りとする人。まま親。
のちのこと:将来のこと。自分が死んだあとのこと。死後に営まれる法事や葬儀のこと。出産後に胎盤などが母体から排出されること。
あひみる:顔を合わせる。対面する。男女が愛情を交わす。契りを結ぶ。
あひー:一緒に。互いに。
あひ:あいだ。間隔。隙間。人との間柄。仲。
あふ:耐える。持ち堪える。差し支えない。大目に見る。完全に〜しとげる。終わりまで〜しおおせる。どうしても〜することができない。
あふ:出会う。対面する。来合わせる。うまく出くわす。あたる。適合する。男女が関係を結ぶ。ちぎる。結婚する。相手になる。立ち向かう。対抗して争う。
あふ:ひとつになる。一緒になる。一致する。調和する。釣り合う。似合う。一緒に〜する。互いに〜しあう。
あぶ:(水、湯、光などを)浴びる。
みる:目に留める。目にする。見て判断する。会う。対面する。経験する。ことにあう。試みる。世話をする。面倒をみる。
む:〜だろう。〜よう。〜がよい。〜ませんか。〜ような。〜としたら。
おもふ:思う。考える。恋する。懐かしく思う。回想する。望む。願う。心配する。悩む。嘆く。予想する。〜そうな顔をする。
ども:〜が。〜のに。〜けれども。〜てもいつも。〜でも必ず。
これ:これ。ここ。こちら。いま。この時。この場合。自分。あなた。おまえ。このひと。まさに。たしかに。もし。おい。
こる:より集まる。固まる。凍る。一心に思い込む。熱中する。じっと考える。
こる:失敗を後悔して二度とするまいと思う。こりる。
こる:木を切る。伐採する。
いづれ:どれ。どの。いつ。どこ。
いづ:出る。現れる。出発する。人に知られる。離れる。逃れる。
つれ:同行者。
とき:時間。時の流れ。時刻。時節。季節。時代。世。治世。場合。とき。折り。栄えているとき。羽振りのよいとき。勢いがあり盛んなこと。時勢。好機。当時。その場。
とき:僧の食事。仏事の食事。法要。法事。
とぎ:話の相手をして退屈慰めること、またその人。寝床の相手をすること、その人。看病すること、その人。
しる:愚かになる。ぼける。ぼんやりとなる。物好きである。いたずら好きである。
しる:理解する。わきまえる。経験する。体験する。世話をする。面倒をみる。交際する。つきあう。分かる。世間に知られている。
しる:統治する。治める。領有する。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
千里集『句題和歌』によると、
「後の時相見ること、これ何れの時ぞ」の句を
題とした作。
第二句「後も君見むと」、
結句「時とかは見る」とある。