明日ご紹介する
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の詞書に登場する歌を先に訳しておきます。
大江嘉言(おほえのよしとき)は
対馬守(つしまのかみ)として
遠く長崎に船で旅立つ際、
「また帰ってきますよ〜」と
この歌を詠みましたが
任国で亡くなってしまいます。
この歌と
明日掲載する歌
『新古今和歌集823番』をセットで
ご鑑賞ください。
《後拾遺和和歌集・476》
命あらばいま帰り来む津の国の難波堀江の蘆のうら葉に
大江嘉言
☆☆☆☆☆☆☆ ☆【直訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
命があれば
やがて、また帰って来るだろう。
摂津国の難波堀江の蘆の生えている入り江に。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
作者;大江嘉言
(わたしは都を離れて、
遠く対馬に赴任することになりました。)
遠く離れても、
わたしの寿命がまだあるなら、
そのうちに、
都に帰って来ることができるでしょう。
「津の国」には、
「船着場があって旅に出る場所」の意味があります。
また、
「難波堀江」には、
「あなたとのご縁を願い望む」という意味があります。
難波堀江に生えている蘆の先端の葉で
虫が悲しげに鳴いていて
まるで
私たちの別れを悲しんでいるように聞こえます。
わたしは
あなたとの再びのご縁を望んでいます。
この湾に生えている蘆に
「そのうちに帰ってきますよ」と
心の中で告げながら
出航するわたしです。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
大江嘉言(おほえのよしとき):?〜1009年頃(没年不詳)。
一条天皇に仕えた。
中古三十六歌仙。
1009年から対馬守。
いのち:生命。寿命。一生。生涯。生命の支え。唯一のよりどころ。
ある:生まれる。出現する。
ある:荒々しくなる。荒廃する。すさむ。興ざめする。
ある:遠のく。離れる。
いま:現在。現代。新しいこと(もの)。ただ今。目下。今すぐに。まもなく。やがて。そのうちに。さらに。もう。なお。新しく。新たに。今度。
かへりく:帰ってくる。戻ってくる。
かへり:帰ること。帰り道。返事。返答。返歌。
つ:船着場
づ:出る。取り出す。
つのくに:摂津の国。
なに:なにもの。なにごと。どのようなもの。なぜ。どうして。
なには:現在の大阪市一帯。古くから交通の要所として栄えた。水路の標識となる杭の「澪標」で知られる。
な:名前。呼び名。評判。うわさ。名声。名目。虚名。
な:おかず。野菜。食用とする魚類。
な:おまえ。あなた。
には:庭園。物事が行われる場所。海面。海上。水面。
ほりえ:地面を掘って水を通した水路。人工の水路。運河。
ほる:願い望む。欲しいと思う。欲しがる。
え:入り江。湾。海。大きい川。
え:枝。縁。
ゑ:会。回。恵。笑。絵。餌。衛。穢。
あし:足。脚。歩くこと。雨足。船の速度。
あし:植物の葦。
あし:悪い。不適当だ。不都合だ。具合が悪い。見苦しい。みっともない。卑しい。貧しい。悪い。不快だ。すぐれない。荒々しい。激しい。下手だ。劣っている。
うらば:草木の先端にある葉。こずえの葉。
うらみ:恨めしく、憎いと思うこと。怨恨。心残りで諦められないと思うこと。未練。悲しみ。嘆き。悲嘆。
うらみ:入り江。船でかいが添いに巡り進むこと。
うらむ:不満に思う。恨みに思う。憎く思う。悲しむ。恨み言をいう。不平不満を訴える。ぐちをこぼす。恨みを晴らす。仇討ちをする。仕返しをする。虫が悲しげに鳴く。風が悲しげな音を立てる。
うら:心。思い。
うら:占い。
うら:入り江。湾。海辺。海岸。
うら:裏面。内部。裏布。