《新古今和歌集・巻第八・哀傷歌》

 

791

返し

土御門内大臣

見し夢を忘るる時はなけれども秋の寝覚めはげにぞ悲しき

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

返し

土御門内大臣

春に見た、父の死という

悲しい夢を忘れる時はないのですが、

秋の寝覚めには、いわれるとおり、

まったく悲しいことです。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;790番への返歌

 

作者;土御門内大臣(源通親)

 

 

夢で見たことを忘れることはないけれど、

夢のように儚い人生を終えた父のこと、

父の生前の姿を

忘れることなど

永久にないけれど、

 

秋の夜中に目が覚めて

父のことを思い出すと

 

本当に、悲しく、切ない気持ちになりますよ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

土御門内大臣:源通親:1149年〜1202年10月21日(享年54)。

1170年1月18日から右近衛権中将

後白河天皇、二条天皇、六条天皇、高倉天皇、安徳天皇、

後鳥羽天皇、土御門天皇に仕えた。

父は、源雅通。

 

みる:目にする。見て判断する。対面する。経験する。試みる。夫婦になる。世話をする。

 

みゆ:見える。目に入る。来る。現れる。思われる。感じられる。見かける。見なれる。人に見せる。人に見られる。人に会う。結婚する。

 

わす:いらっしゃる。おいでになる。

わする:意識的に忘れる。自然に忘れる。

 

ときは:永久不変。とこしえ。常緑。

とき:時間。時の流れ。時刻。時節。季節。時代。世。治世。場合。とき。折り。栄えているとき。羽振りのよいとき。勢いがあり盛んなこと。時勢。好機。当時。その場。

とき:僧の食事。仏事の食事。法要。法事。

とぎ:話の相手をして退屈慰めること、またその人。寝床の相手をすること、その人。看病すること、その人。

 

あき:7月から9月

あく:閉じていたものが開く。あく。隙間ができる。空間が生じる。時間的に空きができる。官職に欠員が生じる。物忌みなどが終わる、あける。

あく:十分に満足する。飽きる。いやになる。

 

ねざめ:眠りから覚めること。夜中や明け方に目を覚ますこと。

 

げに:なるほど。その通り。いかにも。本当にまあ。まったく。

 

かなし:かわいい。いとしい。心惹かれる。おもしろい。すばらしい。みごとに。うまく。切ない。悲しい。気の毒だ。かわいそうだ。貧しい。くやしい。ひどい。残念だ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

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