《新古今和歌集・巻第七・賀歌》
744
日吉禰宜成仲(ひよしのねぎなりなか)、
七十賀(しちじふのが)し侍りにけるに、遣はしける
清輔朝臣
七十(ななそぢ)にみつの浜松老(お)いぬれど千代(ちよ)の残りはなほぞはるけき
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
日吉の禰宜成仲が、七十の賀をしました時に、
贈ってやりました歌
清輔朝臣
七十歳に満ちた御津(みつ)の浜の松は老いてしまったけれど、
樹齢の千歳の残りは、まだ遥かなことだ。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;日吉の禰宜の成仲が
七十歳の祝いの賀をなさいましたので
歌を詠んで贈りました。
作者;藤原清輔
七十歳になられたこと、
誠にめでたいことと
お祝い申し上げます。
日吉神社前の御津の浜松は
年を重ねて
老いてしまっているけれど、
永久の年月は
まだまだ、はるかにたくさん残っています。
これからも
長生きなさってくださいね。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
藤原清輔:1104年〜1177年6月20日(享年74)。
崇徳天皇、近衛天皇、後白河天皇、
二条天皇、六条天皇、高倉天皇に仕えた。
日吉禰宜成仲:祝部(はふりべの)成仲:1099年〜1191年10月13日(享年93)。
滋賀県大津市坂本、琵琶湖畔にある日吉(ひえ)神社の神官。
「禰宜」は神主の下、祝(はふり)の上に位する神官。
40歳頃から歌壇活動を始めた。
永万2年の藤原重家家歌合などに参加。
みつの浜松:御津の浜の松。「みつ」に「満つ」と「御津」をかけた。「御津の浜」は、日吉神社前の琵琶湖畔一帯。
ななそぢ:七十。七十年。七十歳。
みつ:三。みっつ。
みつ:いっぱいになる。充満する。満ちる。満月になる。満潮になる。願望が叶う。充足する。世の中に知れ渡る。いっぱいにする。充満させる。
みず:水。
みづ:みずみずしく生き生きとしていて美しく意。めでたいしるし。瑞兆。
はままつ:浜辺に生えている松。
はまる:おちいる。落ち込む。計略にかかる。だまされる。
まつ:待つ
松の位:大夫の異名。
おい:老いること。年をとること。老年。老人。
をふ:麻の生えているところ。麻原。
をふ:終わらせる。終える。し尽くす。
ぬる:濡れる。寝る。
ぬ:(完了)〜た。〜てしまった。(強意)きっと〜。〜てしまう。(並列)〜たり、〜たり。
よ:現世。御代。治世。一生。生涯。寿命。世間。俗世間。時節。男女の仲。夫婦の仲。生活。暮らし。
よ:余り。以上。ほか。
よ:私。
よ:夜。
ちよ:千年。極めて長い年月。永久。
ちよ:千の夜。多くの夜。
のこり:後にとどまる。残る。生き残る。死に遅れる。
なほ:まっすぐなこと。いつわりのないこと。ふつうに。平凡に。何もしないで。そのまま。
なほ:もとのまま。依然として。なんといってもやはり。さらに。ますます。いっそう。同様に。やはり同じように。それでもやはり。そうはいっても。〜でさえやはり。むしろ。やはりまた。再び。ちょうど。まるで。
はるけし:非常に遠い。時間的に大きく隔たっている。心が遠く離れている。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
清輔集