《新古今和歌集・巻第七・賀歌》

 

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永承(えいしよう)四年内裏歌合に、池水(いけのみづ)といふ心を

伊勢大輔

池水(いけみづ)の代々(よよ)に久しく澄みぬれば底の玉藻(たまも)も光見えけり

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

永承四年の内裏の歌合に、「池の水」という趣を

伊勢大輔

池の水が世世にわたって久しく澄んでいるので、

池の底の玉藻までも、

光が見えることだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;後冷泉天皇の御代、

永承4(1049)年11月に、宮中で催された歌合にて、

「池の水」というテーマで歌を詠みました。

 

作者;伊勢大輔

 

 

代々の天皇の治世において

 

池の水は

瑞々しく

美しく満たされて

長く久しく澄みわたっています。

 

池の底の玉藻も

宝石のように光り輝いて見えています。

 

天皇の御代が

未来永劫明るく輝き、

 

末長い繁栄が

映し出されているかのように見えますよ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

伊勢大輔:989?〜1060?頃。

中古三十六歌仙。女房三十六歌仙。

夫は、高階成順。

康資王母、筑前乳人、源兼俊など優れた歌人を産んだ。

1008年頃、一条天皇の中宮・上東門院藤原彰子に仕える。

和泉式部、紫式部などと親交。

晩年には白河天皇の傅育の任にあたった。

 

いく:生きる。生存する。生きながらえる。助かる。花を生ける。

いく:行く。移動する。赴く。立ち去る。通り過ぎる。

 

みつ:三。みっつ。

みつ:いっぱいになる。充満する。満ちる。満月になる。満潮になる。願望が叶う。充足する。世の中に知れ渡る。いっぱいにする。充満させる。

 

みず:水。

みづ:みずみずしく生き生きとしていて美しく意。めでたいしるし。瑞兆。

 

よ:現世。御代。治世。一生。生涯。寿命。世間。俗世間。時節。男女の仲。夫婦の仲。生活。暮らし。

よ:余り。以上。ほか。

よ:私。

よ:夜。

よ:竹の節。

 

ひさし:時間が長い。長く続く。久しぶりである。しばらくぶりだ。馴染み深い。

 

すむ:居住する。男が女のもとに婿として通う。

すむ:透き通る。曇りがなくなる。清らかに明るく輝く。さえる。響き渡る。心に迷いがなくなる。心が静まる。落ち着いている。上品である。人の気配がなくなる。ひっそりとする。

 

ぬる:濡れる。寝る。

 

そこ:底。奥底。心の奥底。心底。真の能力。力量。底力。

そこ:そこ。その場所。どこそこ。あなた。そなた。きみ。

 

たま:宝石。真珠。美しいものの例え。涙、露などの例え。

たま:魂。霊魂。

たまも:美しい裳。

たまも:美しい藻。

 

ひかり:光。輝き。輝くばかりの美しさ。容姿の美しさ。光栄。ほまれ。勢い。威光。威勢。

 

ひ:太陽。日中。一日。〜の期日。天候。天照大神。天皇。

ひ:炎。あかり。炭火。火事。のろし。

ひ:氷。ひょう。

ひ:不正。具合の悪いこと。価値のないこと。

ひ:濃く明るい朱色。ひのき。

 

かり:一時的なこと。間に合わせであること。かりそめ。

かり:雁。霊魂を運ぶ鳥とされる。

かり:狩り。鷹狩り。桜狩りやもみじ狩り。

 

かる:枯れる。干からびる。干上がる。涸れる。

かる:離れる。遠ざかる。間をあける。隔たる。足が遠くなる。疎遠になる。よそよそしくなる。

かる:草などを切り取る。

かる:借りる。

かる:追い払う。追い立てる。馬などを走らせる。

 

みる:目にする。見て判断する。対面する。経験する。試みる。夫婦になる。世話をする。

 

みゆ:見える。目に入る。来る。現れる。思われる。感じられる。見かける。見なれる。人に見せる。人に見られる。人に会う。結婚する。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

伊勢大輔集