《新古今和歌集・巻第七・賀歌》
723
永承(えいしよう)四年内裏歌合に、池水(いけのみづ)といふ心を
伊勢大輔
池水(いけみづ)の代々(よよ)に久しく澄みぬれば底の玉藻(たまも)も光見えけり
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
永承四年の内裏の歌合に、「池の水」という趣を
伊勢大輔
池の水が世世にわたって久しく澄んでいるので、
池の底の玉藻までも、
光が見えることだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;後冷泉天皇の御代、
永承4(1049)年11月に、宮中で催された歌合にて、
「池の水」というテーマで歌を詠みました。
作者;伊勢大輔
代々の天皇の治世において
池の水は
瑞々しく
美しく満たされて
長く久しく澄みわたっています。
池の底の玉藻も
宝石のように光り輝いて見えています。
天皇の御代が
未来永劫明るく輝き、
末長い繁栄が
映し出されているかのように見えますよ。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
伊勢大輔:989?〜1060?頃。
中古三十六歌仙。女房三十六歌仙。
夫は、高階成順。
康資王母、筑前乳人、源兼俊など優れた歌人を産んだ。
1008年頃、一条天皇の中宮・上東門院藤原彰子に仕える。
和泉式部、紫式部などと親交。
晩年には白河天皇の傅育の任にあたった。
いく:生きる。生存する。生きながらえる。助かる。花を生ける。
いく:行く。移動する。赴く。立ち去る。通り過ぎる。
みつ:三。みっつ。
みつ:いっぱいになる。充満する。満ちる。満月になる。満潮になる。願望が叶う。充足する。世の中に知れ渡る。いっぱいにする。充満させる。
みず:水。
みづ:みずみずしく生き生きとしていて美しく意。めでたいしるし。瑞兆。
よ:現世。御代。治世。一生。生涯。寿命。世間。俗世間。時節。男女の仲。夫婦の仲。生活。暮らし。
よ:余り。以上。ほか。
よ:私。
よ:夜。
よ:竹の節。
ひさし:時間が長い。長く続く。久しぶりである。しばらくぶりだ。馴染み深い。
すむ:居住する。男が女のもとに婿として通う。
すむ:透き通る。曇りがなくなる。清らかに明るく輝く。さえる。響き渡る。心に迷いがなくなる。心が静まる。落ち着いている。上品である。人の気配がなくなる。ひっそりとする。
ぬる:濡れる。寝る。
そこ:底。奥底。心の奥底。心底。真の能力。力量。底力。
そこ:そこ。その場所。どこそこ。あなた。そなた。きみ。
たま:宝石。真珠。美しいものの例え。涙、露などの例え。
たま:魂。霊魂。
たまも:美しい裳。
たまも:美しい藻。
ひかり:光。輝き。輝くばかりの美しさ。容姿の美しさ。光栄。ほまれ。勢い。威光。威勢。
ひ:太陽。日中。一日。〜の期日。天候。天照大神。天皇。
ひ:炎。あかり。炭火。火事。のろし。
ひ:氷。ひょう。
ひ:不正。具合の悪いこと。価値のないこと。
ひ:濃く明るい朱色。ひのき。
かり:一時的なこと。間に合わせであること。かりそめ。
かり:雁。霊魂を運ぶ鳥とされる。
かり:狩り。鷹狩り。桜狩りやもみじ狩り。
かる:枯れる。干からびる。干上がる。涸れる。
かる:離れる。遠ざかる。間をあける。隔たる。足が遠くなる。疎遠になる。よそよそしくなる。
かる:草などを切り取る。
かる:借りる。
かる:追い払う。追い立てる。馬などを走らせる。
みる:目にする。見て判断する。対面する。経験する。試みる。夫婦になる。世話をする。
みゆ:見える。目に入る。来る。現れる。思われる。感じられる。見かける。見なれる。人に見せる。人に見られる。人に会う。結婚する。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
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