《新古今和歌集・巻第六・冬歌》

 

706

千五百番歌合に

皇太后宮大夫俊成

今日(けふ)ごとに今日や限りと惜しめどもまたも今年にあひにけるかな

 

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

千五百番の歌合に

皇太后宮大夫俊成

年々の大晦日の今日ごとに、

今日が最後の大晦日であろうかと

惜しんできたが、

また、まあ、

今年の大晦日の今日にあったことよ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;1201年から翌年にかけて後鳥羽院が主催した

「千五百番歌合」にて詠んだ歌

 

作者;藤原俊成

 

 

私は88歳となりました。

 

(高齢なので)

「今日」が来るたびに、

今日が人生最後の日になるかも知れない…と

名残惜しく、

捨てがたい気持ちになります。

 

けれどもまた、

 

年が改まり

新しい年である「今年」を

迎えることとなりました。

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

皇太后宮大夫俊成:藤原俊成

生没年:1114年〜1204年11月30日(享年91)

皇太后宮大夫(後白河院の皇后、藤原忻子(きんし・よしこ)に

就任したのは、1172年2月10日〜。

1176年9月28日出家。

妻は、美福門院加賀。

 

けふ:今日。

げふ:仕事。職業。

 

ごと:一つひとつの〜。〜のいづれも。どの〜も。〜たびに。〜ごとに。

 

かぎり:限度。限界。極限。最大限。最高潮。期間。うち。範囲内。最期のとき。命の果て。臨終。葬送。全て。あるだけ全部。機会。時期。折。規則。決まり。おきて。〜だけ。〜ばかり。

 

をし:おしどり。水鳥。つがいで仲良く水に浮く姿を、夫婦仲の良いのに例える。

をし:夫婦仲が良いこと。

をし:いとおしい。愛らしい。かわいい。惜しい。捨てがたい。名残惜しい。

をし:貴人が通るとき、人々をしずめる声。

 

をしむ:深く愛する。慈しむ。大切にする。惜しく感じる。物惜しみする。心残りに思う。残念に思う。

 

また:再び。もう一度。重ねて。同様に。同じく。やはり。他にもう一つ。別に。他に。ならびに。および。その上に。それに加えて。さらに。そして。あるいは。一方では。それから。そこで。

 

ことし:今年。

 

あひー:一緒に。互いに。

あひ:あいだ。間隔。隙間。人との間柄。仲。

 

あふ:耐える。持ち堪える。差し支えない。大目に見る。完全に〜しとげる。終わりまで〜しおおせる。どうしても〜することができない。

あふ:出会う。対面する。来合わせる。うまく出くわす。あたる。適合する。男女が関係を結ぶ。ちぎる。結婚する。相手になる。立ち向かう。対抗して争う。

あふ:ひとつになる。一緒になる。一致する。調和する。釣り合う。似合う。一緒に〜する。互いに〜しあう。

あぶ:(水、湯、光などを)浴びる。

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

千五百番