《新古今和歌集・巻第六・冬歌》
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千五百番歌合に
皇太后宮大夫俊成
今日(けふ)ごとに今日や限りと惜しめどもまたも今年にあひにけるかな
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
千五百番の歌合に
皇太后宮大夫俊成
年々の大晦日の今日ごとに、
今日が最後の大晦日であろうかと
惜しんできたが、
また、まあ、
今年の大晦日の今日にあったことよ。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;1201年から翌年にかけて後鳥羽院が主催した
「千五百番歌合」にて詠んだ歌
作者;藤原俊成
私は88歳となりました。
(高齢なので)
「今日」が来るたびに、
今日が人生最後の日になるかも知れない…と
名残惜しく、
捨てがたい気持ちになります。
けれどもまた、
年が改まり
新しい年である「今年」を
迎えることとなりました。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
皇太后宮大夫俊成:藤原俊成
生没年:1114年〜1204年11月30日(享年91)
皇太后宮大夫(後白河院の皇后、藤原忻子(きんし・よしこ)に
就任したのは、1172年2月10日〜。
1176年9月28日出家。
妻は、美福門院加賀。
けふ:今日。
げふ:仕事。職業。
ごと:一つひとつの〜。〜のいづれも。どの〜も。〜たびに。〜ごとに。
かぎり:限度。限界。極限。最大限。最高潮。期間。うち。範囲内。最期のとき。命の果て。臨終。葬送。全て。あるだけ全部。機会。時期。折。規則。決まり。おきて。〜だけ。〜ばかり。
をし:おしどり。水鳥。つがいで仲良く水に浮く姿を、夫婦仲の良いのに例える。
をし:夫婦仲が良いこと。
をし:いとおしい。愛らしい。かわいい。惜しい。捨てがたい。名残惜しい。
をし:貴人が通るとき、人々をしずめる声。
をしむ:深く愛する。慈しむ。大切にする。惜しく感じる。物惜しみする。心残りに思う。残念に思う。
また:再び。もう一度。重ねて。同様に。同じく。やはり。他にもう一つ。別に。他に。ならびに。および。その上に。それに加えて。さらに。そして。あるいは。一方では。それから。そこで。
ことし:今年。
あひー:一緒に。互いに。
あひ:あいだ。間隔。隙間。人との間柄。仲。
あふ:耐える。持ち堪える。差し支えない。大目に見る。完全に〜しとげる。終わりまで〜しおおせる。どうしても〜することができない。
あふ:出会う。対面する。来合わせる。うまく出くわす。あたる。適合する。男女が関係を結ぶ。ちぎる。結婚する。相手になる。立ち向かう。対抗して争う。
あふ:ひとつになる。一緒になる。一致する。調和する。釣り合う。似合う。一緒に〜する。互いに〜しあう。
あぶ:(水、湯、光などを)浴びる。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
千五百番