《新古今和歌集・巻第六・冬歌》

 

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鷹狩(たかがり)の心をよみ侍りける

左近中将公衡

狩り暮し交野(かたの)のま柴(しば)折り敷きて淀(よど)の川瀬(かはせ)の月を見るかな

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「鷹狩」の趣を詠みました歌

左近中将公衡

鷹狩をしながら一日を暮らし、

交野の柴を折り敷いて、

淀川の川瀬に映る月を見ることよ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;『殷富門院大輔百首題』にて、

「鷹狩=(命が枯れて行き着く所)」というテーマで

歌を詠みました。

 

作者;藤原公衡

 

 

皇室の狩猟地、

交野で

一日じゅう、鷹狩をして暮らしました。

 

小さな雑草や雑木を折り重ねて敷いて

 

水が流れない淀の川瀬で

川面に映る月を見ていましたよ。

 

 

命が枯れて

月の世界(天国)に逝かれた人のことを想い、

 

涙で目の前を暗くして

一日中、過ごしました。

 

気が挫けている多くの人々が

 

波が折り重なるように

ますます

その方の周りに集まってこられました。

 

何度も流される涙が

淀んだ川瀬のようにたまって

一面に広がっています。

 

最後の息を吐いて

月の世界に逝かれたその人の身体に

多くの人々が寄り添い、

臨終をみとりましたよ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

この歌は誰のことを言っているか不明ですが

作者が仕えていた高倉天皇のことか?…

とも考えられます。

 

藤原公衡:1158年〜1193年(享年36)。

1170年、高倉天皇の侍従となる。

1187年、殷部門院大輔の百首歌に詠進。

(「公衡百首」として新編国家大観に収録)。

俊成・慈円・寂蓮・定家らと親交があった。

 

高倉天皇:1161年9月3日〜1181年1月14日(享年19)。

在位:1168年2月19日〜1180年2月21日。

1180年2月、安徳天皇に譲位し、太上天皇となったが

間もなく病に倒れた。

父は、後白河天皇。

母は、平滋子(建春門院)。

子に、安徳天皇、後鳥羽天皇。

中宮は、平徳子(建礼門院)。

 

たかがり:飼い慣らした鷹や隼を放って、野鳥や小さい獣を捕える狩猟。

 

たか-:高い。大きい。立派ななどの意を添える。

たか:知行・扶持などの額。禄高。収入額。最後に行き着く所。とどのつまり。挙げ句の果て。程度。限度。

たが:誰の。誰が。

 

かる:枯れる。干からびる。干上がる。涸れる。

かる:離れる。遠ざかる。間をあける。隔たる。足が遠くなる。疎遠になる。よそよそしくなる。

かる:草などを切り取る。

かる:借りる。

かる:追い払う。追い立てる。馬などを走らせる。

 

かり:雁。

かり:山野で鳥獣などを捕えること。特に、鷹狩り。花や木などを鑑賞すること。特に、桜狩りや紅葉狩りなど。

 

かりくらす:日が暮れるまで一日中狩りをする。狩りをして一日中暮らす。

 

くら:人が座る場所。物を置く台。

くらし:暗い。愚かだ。精通していない。真理を悟っていない。不足だ。欠けている。

くらす:心を暗くする。悲しみに暮れさせる。涙で目の前が暗くなる。

くらす:日が暮れるまで過ごす。月日を送る。生活する。日が暮れるまで〜する。

 

かたの:皇室の狩猟地。桜の名所。

かたし:難しい。なかなかできない。めったにない。

 

しば:小さな雑木。柴。

しば:雑草。

しば:たびたび。しきりに。しばしば。

 

ます:いらっしゃる。おいでになる。

ます:優れる。上回っている。まさる。増加する。

ます:申し上げる。

まし:もし〜としたら〜だろうに。〜たらよい。〜うかしら。〜だろう。

 

は:羽。羽毛。翼。矢羽。

は:はし。へり。ふち。

 

をりしく:波が折り重なるようにして寄せる。しきりに寄せる

をる:波が折り砕ける。寄せ返す。曲げる。折りとる。折り畳む。折れる。気が挫ける。負ける。

 

おる:高いところからおりる。貴人の前から退く。下がる。退出する。位を退く。

 

しく:追いつく。及ぶ。匹敵する。

しく:一面に広がる。広く覆う。平に広げる。治める。統治する。影響を全体に及ぼす。広める。

しく:何度も繰り返す。度重なる。しきりに〜する。

しく:四苦。人生における4つの大きな苦しみ。生・老・病・死の4つ。

 

よど:水の流れが滞ること。その場所。

よと:夜に聞こえる物音。

よどむ:水の流れが止まって滞る。水が流れないでたまる。物事がうまく運ばない。停滞する。ためらう。

 

かはす:交差させる。通わせる。変える。移す。

せ:女性が男性を親しんで呼ぶ語。

せ:浅瀬。早瀬。地点。そのようなこと。

かはせ:川底が浅く、流れが速いところ。浅瀬。

 

つき:月。月の光。一か月。

つぎ:後に続く事。次位。劣る事。控えの間。跡継ぎ。世継ぎ。

つく:終わる。果てる。尽きる。なくなる。消え失せる。きわまる。

つく:呼吸する。息を吐く。食べ物をはく。うそをつく。

つく:突く。打ち鳴らす。手で支える。ぬかづく。

つく:築く。

つく:付着させる。体を寄せる。備わる。感情が生まれる。起こす。気にいる。取り憑く。後に従う。味方する。寄り添う。はっきりする。届く。就任する。関して。ちなんで。

 

みる:目にする。見て判断する。対面する。経験する。試みる。夫婦になる。世話をする。

 

みゆ:見える。目に入る。来る。現れる。思われる。感じられる。見かける。見なれる。人に見せる。人に見られる。人に会う。結婚する。

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

殷富門院大輔百首題