《新古今和歌集・巻第六・冬歌》
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題知らず
西行法師
寂(さび)しさにたへたる人のまたもあれな庵(いほり)ならべん冬の山里(やまざと)
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
題知らず
西行法師
私のように寂しさに耐えている人が
他にもいるといいいなあ。
いたら、その人と草庵を並べて住もう。
この山里で。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;大事な人が亡くなったので
詠みました歌
作者;西行法師
冬の山里で
亡き人の墓地に行くと、
私と同様に
心が満たされず、
寂しい気持ちをこらえている人が
他にもおられました。
同じ気持ちでいる人とは
寂しく荒廃した気持ちを共有し、
共に過ごすのが良いだろう。
草庵を並べて
たくさんの募る想いを
一緒に語り合いませんか。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
西行法師:1118年〜1190年2月16日(享年73)。
1140年:出家して西行法師と号する
1149年:高野山に入る。
さびし:ひっそりとしている。ひっそりとしていて寂しい。なんとなく寒々としている。心が満たされず楽しくない。貧しい。
たへ:神秘的なほどに優れている。霊妙だ。上手だ。巧妙だ。
たふ:じっと耐える。こらえる。我慢する。もちこたえる。能力をもつ。すぐれる。
ひと:人間。世間の人。大人。立派な人。人柄。性質。身分。他人。あの人。従者。あなた。
また:再び。もう一度。重ねて。同様に。同じく。やはり。他にもう一つ。別に。他に。ならびに。および。その上に。それに加えて。さらに。そして。あるいは。一方では。それから。そこで。
あり:存在する。いる。ある。生きている。その場にいる。居合わせる。時間が過ぎる。経過する。栄えて暮らす。優れている。良いところがある。
ある:生まれる。
ある:天候などが荒々しくなる。荒れ狂う。荒廃する。人心がすさむ。興ざめする。しらける。
ある:遠のく。離れる。散り散りになる。
いほり:仮の宿り。小屋。草木で作った粗末な家。草庵。
いほ:五百。数の多いこと。
なら:楢。
なら:奈良。
ならす:慣れ親しませる。なれさせる。練習させる。習わせる。
ならはし:習慣。風習。ならわし。練習。稽古。しつけ。
ならひ:慣れること。習慣。しきたり。世の常。定め。きまり。言い伝え。由緒。
ならぶ:一列に連なる。そろう。匹敵する。同じになる。並べる。そろえる。比べる。比較する。匹敵させる。
む:〜だろう。〜よう。〜がよい。〜ませんか。〜ような。〜としたら。
ふゆ:陰暦の10月から12月まで。
やまざと:山中の村里。山荘。
やま:山岳。比叡山。築山。墓地。天皇の陵。多く積み重なっていること。憧れたり仰ぎ見たりするもの。物事の絶頂。重要な段階。
さと:人里。集落。いなか。自宅。生家。実家。養家。俗世間。
さと:さっと。ぱっと。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
山家集
西行法師家集