《新古今和歌集・巻第六・冬歌》
609
千五百番歌合に
右衛門督通具(みちとも)
霜(しも)結(むす)ぶ袖の片敷(かたし)きうち解(と)けて寝(ね)ぬ夜(よ)の月の影ぞ寒けき
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
千五百番の歌合に
右衛門督通具
涙が霜となる片袖を敷いての独り寝に、
心安らかになって寝られない夜の月の光の
寒々としていることよ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;1201年から翌年にかけて後鳥羽院が主催した
『千五百番歌合』で詠みました歌
作者;右衛門督通具
霜が降りている
寒い冬の夜。
袖にも霜が降りているのかと思ったら
私の涙が霜のように
凍っていたのでした。
あなたがいない夜、
私はひとりで
片方だけの袖を敷いて寝ています。
あなたと共に
くつろいで寝ることができない夜は
月の光も寒々として見えます。
あなたの面影に思いを寄せて
ひとりで
寒い夜を過ごしていますよ。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
前の歌(608番)への
返歌のような内容です。
右衛門督通具:堀河(源) 通具:1171年〜1227年9月2日(享年57)。
後鳥羽院歌壇で活躍した。
藤原俊成の女と結婚していたが、離別。
しも:下方。低いところ。川下。下半身。時間的に後の方。後世。後半。人民。臣下。中心から離れているところ。
しも:霜。白髪のたとえ。
しも:〜なさる。
しも:上の事柄を強調する。〜が。かえって。(下に打消を伴って)必ずしも〜ない。(強い否定)決して〜ない。
しも:死も。
むすぶ:形をなす。できる。つなぐ。結び合わせる。編んで作る。生じさせる。人との関係をつくる。契る。約束する。印をむすぶ。
むすぶ:水などを両手のひらですくう。
そで:袖
かたしく:寂しい一人寝をする。
かたしき:自分の着物の片側だけを敷いて一人で寝ること。
かたし:壊れにくい。厳しい。強い。
かたし:難しい。めったにない。
うちとく:氷などがとける。くつろぐ。安心する。男女が慣れ親しむ。隔てがなくなる。うちとける。油断する。気が緩む。紐の結び目などをほどく。解く。解き放つ。
ねぬ:寝ない。
よ:現世。御代。治世。一生。生涯。寿命。世間。俗世間。時節。男女の仲。夫婦の仲。生活。暮らし。
よ:余り。以上。ほか。
よ:私。
よ:夜。
つき:月。月の光。一か月。
つぎ:後に続く事。次位。劣る事。控えの間。跡継ぎ。世継ぎ。
つく:終わる。果てる。尽きる。なくなる。消え失せる。きわまる。
つく:呼吸する。息を吐く。食べ物をはく。うそをつく。
つく:突く。打ち鳴らす。手で支える。ぬかづく。
つく:築く。
つく:付着させる。体を寄せる。備わる。感情が生まれる。起こす。気にいる。取り憑く。後に従う。味方する。寄り添う。はっきりする。届く。就任する。関して。ちなんで。
つきかげ:月明かり。月に照らされた人や物の姿。月。
かげ:人やものの後方。物陰。隠れ場所。人目につかないところ。恩恵。おかげ。庇護。
かげ:光。姿。形。水面や鏡にうつる姿、形。面影。影法師。痩せ衰えた様子。やつれた姿。虚像。幻影。影のように寄り添って離れないもの。死者の霊魂。
かけ:結びつけること。口に出して言うこと。
かけ:馬に乗って走らせること。
さむ;熱いものが冷たくなる。冷える。体温が下がる。高まっていた感情がしずまる。冷静になる。興醒める。
さむ:眠り、夢、酔いなどからさめる。目覚める。悲しみ、迷いなどが消える。正常な心になる。
さむし:寒い。冷たい。寒々としている。貧乏だ。
さむけし:寒そうだ。寒々しい。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
千五百番