《新古今和歌集・巻第六・冬歌》

 

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題知らず

式子内親王

風寒み木の葉晴れゆく夜(よ)な夜(よ)なに残るくまなき庭の月影(つきかげ)

 

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

題知らず

式子内親王

風が寒く吹くので、

木の葉が散って陰がなくなっていく夜ごとに、

照らし残る隅もない、庭の月の光よ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;亡くなった人に捧げる歌

 

作者;式子内親王

 

 

吹く風が寒々として

身体に冷たく感じさせる季節となりました。

 

夜な夜な吹く冷たい風が

木の葉を散らすので、

空が開けて広々と見えます。

 

毎晩、庭にさす月の光が

あけっぴろげに全て入ってきます。

 

月の光は、

生き残った私に

 

月の世界に逝った(亡くなった)人の面影を

毎晩、

余すところなく思い出させてくれますよ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

式子内親王:1149年〜1201年1月25日(享年53)。

加茂斎院。

新三十六歌仙。女房三十六歌仙。

後白河天皇の第三皇女。

母は、藤原成子。

1199年5月頃から身体の不調。

 

かぜ:風。風習。ならわし。伝統。風邪。

 

さむ;熱いものが冷たくなる

さむし:寒い。冷たい。寒々としている。貧乏だ。

 

み:美しい。立派な。

み:からだ。身分。身の上。自分自身。命。本体。中身。

 

こ;子

は;端。葉。

このは;ことのは;言の葉

この;木の

 

はれ:晴天。霧や雨が晴れること。心も晴れ晴れするような広々とした場所。晴れがましいこと。公。公式。

 

はる:春。新年。正月。

はる:一面に広がる。芽が出る。芽吹く。強く盛んになる。張り合う。緊張する。たるまないように引っ張る。広げる。貼り付ける。設ける。仕掛ける。たたく。打つ。

はる:晴天になる。心が晴れる。心がすっきりする。晴れ晴れする。ひらけている。見晴らしがいい。広々としている。

はる:開墾する。

はるか:遥かに遠い。遥だ。

はる:春宮

 

いく:生きる。生存する。生きながらえる。助かる。花を生ける。

いく:行く。移動する。赴く。立ち去る。通り過ぎる。

ゆく:流れ去る。経過する。死ぬ。亡くなる。気が晴れる。心が晴れる。満足する。〜続ける。ずっと〜する。しだいに〜していく。

 

よ:現世。御代。治世。一生。生涯。寿命。世間。俗世間。時節。男女の仲。夫婦の仲。生活。暮らし。

よ:余り。以上。ほか。

よ:私。

よ:夜。

 

よなよな:毎晩。夜ごと。

 

のこる:あとにとどまる。残る。生き残る。死に遅れる。

 

くまなし:曇りがない。陰がない。隠すことがない。あけっぴろげである。行き届いている。精通している。

 

なき:泣き。亡き。無き。鳴き。

 

には:庭園。物事が行われる場所。海面。海上。水面。

 

つき:月。月の光。一か月。

つぎ:後に続く事。次位。劣る事。控えの間。跡継ぎ。世継ぎ。

つく:終わる。果てる。尽きる。なくなる。消え失せる。きわまる。

つく:呼吸する。息を吐く。食べ物をはく。うそをつく。

つく:突く。打ち鳴らす。手で支える。ぬかづく。

つく:築く。

つく:付着させる。体を寄せる。備わる。感情が生まれる。起こす。気にいる。取り憑く。後に従う。味方する。寄り添う。はっきりする。届く。就任する。関して。ちなんで。

 

つきかげ:月明かり。月に照らされた人や物の姿。月。

 

かげ:人やものの後方。物陰。隠れ場所。人目につかないところ。恩恵。おかげ。庇護。

かげ:光。姿。形。水面や鏡にうつる姿、形。面影。影法師。痩せ衰えた様子。やつれた姿。虚像。幻影。影のように寄り添って離れないもの。死者の霊魂。

 

かけ:結びつけること。口に出して言うこと。

かけ:馬に乗って走らせること。