《新古今和歌集・巻第四・秋歌上》

 

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七夕の心を

女御徽子(きし)女王

わくらばに天の川波よるながら明くる空にはまかせずもがな

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

女御徽子女王

まれに七夕の寄り合う天の川は、

川波の寄る夜のままで、

明ける空にはまかせないでおきたいものだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;七夕の気持ちを歌に詠む

 

作者;(村上天皇の)女御徽子女王

 

 

(私(徽子女王)は、村上天皇の女御です。

村上天皇は、

967年5月25日に、42歳で崩御されました。)

 

天皇は

病気のため、

朽ちた葉っぱのように命を終えられました。

 

在位のまま天国に召されたのです。

 

空を仰ぐと

偶然にも

天の川が見えています。

 

天の川の川面に

波がたっているように見えるのは

私が泣いているからですね。

 

夜が

だんだん明けて

朝になっていきます。

 

天皇を亡くした

私のこの虚しい気持ちが

 

夜明けとともに

落ち着いてくれたらいいのに。

 

そして

川にこれ以上、水を引き入れないで

=これ以上

涙を流させないでいてくれたらいいのに。

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

徽子女王:929年〜985年(享年57)。

三十六歌仙。

女房三十六歌仙。

949年〜村上天皇の女御。

956年「斎宮女御徽子女王歌合」主催。

959年「斎宮女御徽子女王前栽合」を主催。

967年、村上天皇が崩御。

985年、病気のため死去。

 

村上天皇:926年6月2日〜967年5月25日(享年42)。

在位:946年4月20日〜967年5月25日

在位のまま崩御。

父は、醍醐天皇。

母は、中宮穏子

 

わくらば:病葉。朽ち葉。

わくらばに:たまたま。まれに。偶然に。

 

あま:天。空。尼。海女。海人。

 

あまのかは:銀河。

 

かは:川

なみ:波。波のような動きをするもの。しわ。

なみ:並ぶこと。並び。列。同類。同等。共通する性質。ふつうだ。

なみ:無いので。

 

よる:夜

よる:基づく。原因となる。影響をうける。かかわる。応じる。従う。

よる:近づく。接近する。集まる。よりあう。訪れる。立ち寄る。心が傾く。心ひかれる。好意をよせる。頼りにする。よりかかる。もたれかかる。もののけが取り憑く。寄付される。

よる:何本か捻り合わせて一本にする。よじれる。しわになる。

 

ながら:〜まま。〜ながら。〜けれども。〜のとおりに。すっかりそのまま。

なから:半分。半ば。途中。中心。

ながらふ:長くとどまる。長生きする。生きながらえる。

 

あく:夜が明ける。年が改まる。

 

そら:空。天。空中。天候。方向。場所。不確かな方向。境遇。気持ち。心境。心細く不安な気持ち。あたりの雰囲気。たたずまい。

そら:虚な気持ちだ。うわのそらだ。気もそぞろだ。落ち着かない。根拠がない。よりどころがない。いいかげんだ。はかない。むなしい。かいがない。暗記して。足元がおぼつかない。

 

まかす:水をひきいれる。

まかす:自由にさせる。ゆだねる。任せる。従う。

 

もがな:〜であったらなあ。〜てくれたらいいのに。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

斎宮女御集