《新古今和歌集・巻第四・秋歌上》

 

324

七夕の心を

待賢門院堀河

七夕の逢(あ)ふ瀬(せ)絶えせぬ天の川いかなる秋か渡り初(そ)めけん

 

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

待賢門院堀河

七夕の逢う時が絶えない天の川よ。

いつの秋に渡りはじめたのであろうか。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

題詞;七夕の気持ちを歌に詠む

(久安百首(1142〜1144年、崇徳院から題がくだされ、

1150年に詠進歌が出揃った)にて詠んだ歌)

 

作者;待賢門院堀河

 

 

天の川では

一年に一度、七夕の日に

織姫と彦星が逢う…という機会が

途絶えることなく続いています。

 

どのような理由で

秋のこの日に

天の川を渡るという習慣が始まったのでしょうね。

 

天の川を渡り始めた

初めての秋は

とても深い感動を

味わわれたことでしょう。

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

待賢門院堀河:生没年不詳。

女房三十六歌仙。

中古六歌仙。

待賢門院藤原璋子(鳥羽天皇の中宮)に出仕。

堀河と呼ばれていた。

1142年、璋子の落飾に伴い、出家。

夫とは死別している。

 

藤原璋子:1101年〜1145年8月22日(享年45)。

崇徳天皇、後白河天皇の母。

鳥羽天皇の中宮。

1142年に出家。

 

たなばた:七夕。

あふせ:会う機会。しのびあいの機会。

あふ:出会う。対面する。うまく出会わす。結婚する。立ち向かう。

あふ:一緒になる。一致する。調和する。つりあう。互いに〜しあう。

あふ:たえる。こらえる。差し支えない。大目にみる。

 

せ:女性が男性を親しんで呼ぶ語。

せ:浅瀬。早瀬。機会。出会う場所。地点。そのようなこと。

 

たゆ:切れる。途絶える。やむ。絶命する。離縁する。

 

あま:天。空。尼。海女。海人。

 

あまのかは:銀河。

 

いかなる:どのような。どういう。

 

あき:7月から9月

あく:閉じていたものが開く。あく。隙間ができる。空間が生じる。時間的に空きができる。官職に欠員が生じる。物忌みなどが終わる、あける。

あく:十分に満足する。飽きる。いやになる。

 

わたる:越えていく。通る。行く。過ごす。またがる。両岸にかかる。広く通じる。いらっしゃる。おいでになる。長い間ずっと〜し続ける。一面に〜する。

 

そむ:〜し始める。

そむ:染まる。影響される。感化される。心に深く感じる。心に深くしみこむ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

久安百首

堀河集