《新古今和歌集・巻第四・秋歌上》
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七夕の心を
待賢門院堀河
七夕の逢(あ)ふ瀬(せ)絶えせぬ天の川いかなる秋か渡り初(そ)めけん
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
待賢門院堀河
七夕の逢う時が絶えない天の川よ。
いつの秋に渡りはじめたのであろうか。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;七夕の気持ちを歌に詠む
(久安百首(1142〜1144年、崇徳院から題がくだされ、
1150年に詠進歌が出揃った)にて詠んだ歌)
作者;待賢門院堀河
天の川では
一年に一度、七夕の日に
織姫と彦星が逢う…という機会が
途絶えることなく続いています。
どのような理由で
秋のこの日に
天の川を渡るという習慣が始まったのでしょうね。
天の川を渡り始めた
初めての秋は
とても深い感動を
味わわれたことでしょう。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
待賢門院堀河:生没年不詳。
女房三十六歌仙。
中古六歌仙。
待賢門院藤原璋子(鳥羽天皇の中宮)に出仕。
堀河と呼ばれていた。
1142年、璋子の落飾に伴い、出家。
夫とは死別している。
藤原璋子:1101年〜1145年8月22日(享年45)。
崇徳天皇、後白河天皇の母。
鳥羽天皇の中宮。
1142年に出家。
たなばた:七夕。
あふせ:会う機会。しのびあいの機会。
あふ:出会う。対面する。うまく出会わす。結婚する。立ち向かう。
あふ:一緒になる。一致する。調和する。つりあう。互いに〜しあう。
あふ:たえる。こらえる。差し支えない。大目にみる。
せ:女性が男性を親しんで呼ぶ語。
せ:浅瀬。早瀬。機会。出会う場所。地点。そのようなこと。
たゆ:切れる。途絶える。やむ。絶命する。離縁する。
あま:天。空。尼。海女。海人。
あまのかは:銀河。
いかなる:どのような。どういう。
あき:7月から9月
あく:閉じていたものが開く。あく。隙間ができる。空間が生じる。時間的に空きができる。官職に欠員が生じる。物忌みなどが終わる、あける。
あく:十分に満足する。飽きる。いやになる。
わたる:越えていく。通る。行く。過ごす。またがる。両岸にかかる。広く通じる。いらっしゃる。おいでになる。長い間ずっと〜し続ける。一面に〜する。
そむ:〜し始める。
そむ:染まる。影響される。感化される。心に深く感じる。心に深くしみこむ。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
久安百首
堀河集