《新古今和歌集・巻第三・夏歌》
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題知らず
読人しらず
時鳥(ほととぎす)花橘の香をとめて鳴くは昔の人や恋しき
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
題知らず
読人しらず
ほととぎすよ。
花橘の香を求めて鳴いているのは、
昔親しかった人が恋しいのか。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;大姉となった(亡くなった)人に贈る歌
作者;黄泉の国へいった人への歌
恋人だった人(若い女性)が亡くなりました。
ほととぎすが
橘の花の香りを探し求めて鳴いています。
後に残された私もまた、
ほととぎすのように泣いています。
故人となったあの人が恋しく思われて
泣いているのですよ。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
たい:からだ。ありさま。様子。本体。本質。
たい:対等であること。優劣がないこと。
だい:位や家督などを継いだ順序。
だい:大きいこと。多いこと。広いこと。
だい:位や家督を継いでその地位にある期間。天皇の御代。代わり。代償。代理。
たいし:皇太子。
だいし:菩薩。出家した女性。高徳の僧。
だいじ:重大な事件。大事件。出家すること。たやすくないこと。大切なこと。手厚く扱うこと。菩薩の大きな慈悲。
しらず:わからない。検討がつかない。〜はともかく。〜はいざしらず。
よみ:黄泉
ほととぎす:初夏に渡来し、秋に南方へ帰る。巣を作らず、ウグイスなどの巣に卵を生んで雛を育てさせる。夏の訪れを告げる代表的な渡鳥。昼だけでなく夜も鳴く。山からやってきて山に帰るものと思われ、「山ほととぎす」とも言った。
ほとけ:仏陀。釈迦。仏像。仏法。死者。死者の霊。大切な人。情け深い人。おひとよし。
とき:時間。時刻。時候。季節。時代。御代。場合。とき。栄えているとき。時勢。良い機会。当時。その場。
とき:僧の食事。法事。
とぎ:話し相手。寝床の相手。看病をする人。
とく:話してわからせる。説明する。
たちばな:橘。初夏に香りの高い白い花をつけ、冬に黄色の果実が実る。和歌では多く「ほととぎす」と取り合わされ、昔を思い出すよすがとして使われた。
たつ:足で立つ。現れる。立ち上る。飛び立つ。出発する。はっきりと見える。時間が過ぎる。高く響く。評判になる。乗り物が止まっている。位につく。切れる。さえる。けんかをする。設ける。設置する。
たつ:切り離す。断ち切る。習慣をやめる。裁断する。
はなつ:手放す。自由にする。逃がす。あける。開け放つ。発する。射る。火をつける。除外する。追放する。流罪にする。解任する。
はなる:遠ざかる。隔たる。関係がなくなる。縁がきれる。離別する。逃げる。免官となる。俗世間を離れる。ひらく。開け放される。
か:香り。におい。
をとめ:未婚の女性。若い娘。五節の舞姫。
とむ:探す。訪ね求める。
とむ:止める。静止する。後に残す。とどめる。関心をもつ。注目する。
なく:亡く。泣く。無く。鳴く。
むかし:過去。ずっと以前。故人。前世。
むがし:喜ばしい。うれしい。ありがたい。
ひと:人間。世間の人。大人。立派な人。人柄。性質。身分。他人。あの人。従者。あなた。
こひし:慕わしい。懐かしい。恋しい。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《「日本古典文学全集」の脚注》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
六帖
和漢朗詠集