《新古今和歌集・巻第二・春歌下》

 

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題知らず

伊勢

山桜散りてみ雪にまがひなばいづれか花と春に問はなん

 

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

題知らず

伊勢

山桜が散って、

木の下の消え残っている雪と

まぎらわしくなってしまったならば、

どれが花であるかと、

春に向かって尋ねてほしい。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

題詞;若くして菩薩となられた(亡くなった)

均子内親王(宇多天皇の皇女)について歌を詠んだ

 

作者;伊勢

 

 

宇多天皇の皇女、

均子内親王が21歳の若さで亡くなられました。

まるで美しい山桜が散って、

雪と区別ができなくなってしまう時のよう。

美しい皇女はこの世を離れて

ここからは見ることができない

あちらの世界に逝かれたのです。

美しい皇女の魂を慰め、

たくさんの花を供えて弔いましょう。

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

この歌も、前の歌に引き続き、

宇多天皇の皇女、均子内親王が

21歳の若さで亡くなったことをうたっていると

考えられます。

この歌だけを単独で見ても、

均子内親王のことが詠まれているとは

分かりません。

しかし、『新古今和歌集』の掲載順が、

テーマを明示してくれています。

 

『伊勢集』によると、「春日歌合」の時の作で、

初句「桜花」。

 

伊勢:872年〜938年(享年67)

三十六歌仙。女房三十六歌仙。

宇多天皇の中宮藤原温子に仕える。

宇多天皇の皇子を産むが、その子は早世。

敦慶親王(宇多天皇の皇子)と結婚し、中務を産む。

 

均子内親王:890〜910年2月25日(享年21)。

宇多天皇の皇女。

母は、藤原温子。温子の一人娘でした。

 

たい:からだ。ありさま。様子。本体。本質。

たい:対等であること。優劣がないこと。

だい:位や家督などを継いだ順序。

だい:大きいこと。多いこと。広いこと。

だい:位や家督を継いでその地位にある期間。天皇の御代。代わり。代償。代理。

たいし:皇太子。

だいし:菩薩。出家した女性。高徳の僧。

だいじ:重大な事件。大事件。出家すること。たやすくないこと。大切なこと。手厚く扱うこと。菩薩の大きな慈悲。

しらず:わからない。検討がつかない。〜はともかく。〜はいざしらず。

 

やま:山岳。比叡山。墓地。天皇の陵。多く積み重なっていること。憧れたりあおぎみたりするもの。物事の絶頂。物事の最も重要な段階。

 

さく:遠くへやる。放つ。遠ざける。引き離す。

さく:切り離す。割る。引き裂く。切れて分かれる。割れる。裂ける。

さく:無事に。変わりなく。つつがなく。幸に。

さぐ:つるす。ぶら下げる。垂らす。おろす。低くする。後ろへさげる。退かせる。退出させる。格下げする。見下す。見下げる。侮る。

くらす:心を暗くする。悲しみに暮れさせる。

くらす:日が暮れるまで時を過ごす。過ごす。月日を送る。生活する。日が暮れるまで〜する。〜続けて1日を過ごす。

 

ちる:散る。散らばる。散り落ちる。別れ別れになる。ばらばらになる。世間に広まる。知れ渡る。気が散る。落ち着かない。まとまらない。

ちり:ほこり。わずかなこと。少しの汚れ。わずかな汚点。小さな欠点。この世の汚れ。俗世間。

ちり:散ること。散るもの。

み:美しい。からだ。命。

ゆき:逝く。雪。

まがひ:入り乱れる。入り乱れてはっきりしない。見分けがつかなくなる。区別できないほどによく似ている。見失う。見間違える。

なば:〜たら。〜してしまったら。

いづれ:どの。いつ。どこ。いずれにせよ。どうせ。どのみち。

 

はな:花。薄い藍色。華やかないこと。栄えていること。うつろいやすいこと。上辺だけの美しさ。芸の華やかさ。祝儀。

はな:先端。末端。はし。

はな:鼻。鼻水。風邪。

はなつ:身から離す。手放す。自由にする。逃がす。あける。開く。発する。矢をいる。火をつける。除外する。追放する。流罪にする。

 

はる:春。新年。正月。

はる:一面に広がる。芽が出る。芽吹く。強く盛んになる。張り合う。緊張する。たるまないように引っ張る。広げる。貼り付ける。設ける。仕掛ける。たたく。打つ。

はる:晴天になる。心が晴れる。心がすっきりする。晴れ晴れする。ひらけている。見晴らしがいい。広々としている。

はる:開墾する。

はるか:遥かに遠い。遥だ。

はる:春宮

 

とふ:尋ねる。聞く。人の様子や安否を尋ねる。取り調べる。詰問する。訪問する。見舞う。死者の霊を慰める。弔う。弔問する。

なん:今頃は〜だろう。〜ているだろう。

なむ:南無。

なむ:並ぶ。連なる。一列に並べる。