《新古今和歌集・巻第一・春歌上》
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和歌所にて歌つかうまつりしに、春歌とてよめる
寂蓮法師
葛城(かづらき)や高間(たかま)の桜咲きにけり立田の奥にかかる白雲
☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆
和歌所で歌を詠んでさしあげた時、春の歌として詠んだ歌
寂蓮法師
葛城の高間山の桜が咲いたことだ。
立田山の奥にかかって、それを思わせる白雲よ。
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✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
(※『和歌コード』とは、
直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;1202年3月に後鳥羽院主催の「三体和歌」の会の時、
「春の歌」として詠んだ歌。
作者;寂蓮法師
式子内親王(1201年1月没)(後白河天皇の第三皇女)に続き、
藤原多子(1201年12月没)(近衛天皇・二条天皇の后)までも
神々が住む天上の世界(天国)へと
旅立って逝かれました。
わずかな期間のうちに、次から次へと高貴な方々が亡くなり、
耐えがたく辛い気持ちです。
彼女たちは、葛城の高間山に咲く桜のように
美しい方々でした。
しかし、花が散るようにこの世を離れて逝かれたのです。
大事な人を亡くした宮中の奥の間では、
また、私たちの心の中では、
山に白い雲がかかって視界が遮られるように
気が滅入り、
涙で目の前が霞むことですよ。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
和歌所;1202年2月「影供歌合」
後鳥羽院に歌を詠んでさしあげた。
1202年3月に後鳥羽院主催の「三体和歌」の会の時の作。
「三体和歌」の会は、
春、夏、秋、冬、恋、旅の六首の歌を
三体に詠み分けた催しで、
春、夏は「太く大きい」趣に詠んだ。
寂蓮法師:1139年?〜1202年7月20日(享年64)。
俗名は藤原定長。
1159年頃、叔父(藤原俊成)の養子となる。
30歳で出家。
『新古今和歌集』の撰者となるが、完成を見ずに亡くなった。
藤原多子(まさるこ):1140年〜1201年12月24日(享年62)。
近衛天皇の皇后。二条天皇の后。
「二代の后」と呼ばれた。
父は、徳大寺公能。
母は、藤原豪子。
養父は、藤原頼長。
養父は、藤原幸子。
式子内親王:1149年〜1201年1月25日(享年53)。
後白河天皇の第三皇女。
母は、藤原成子。
後鳥羽院は、後白河院の孫。
かづらぎやま:奈良県と大阪府の間にある金剛山地の山々。
かつ:一方では。すぐに。次から次へと。ちょっと。わずかに。すでに。前もって。あらかじめ。そのうえ。それに加えて。
つらし:薄情だ。冷淡だ。たえがたい。つらい。
かづら:つるくさ
かづら:つる草や草木を髪に巻いて飾りにしたもの。女性の髪が少ない時にそえるもの。
かづらく:つる草や草木の枝・花などを髪飾りにして頭につける。
たかまのはら:神々が住むと言われた天上の世界。
たかし:高い。声が大きい。高貴だ。すぐれている。自尊心がある。気位が高い。広く知られている。評判が高い。月日がたっている。老いている。
ま:目。すきま。間。
さく:遠くへやる。放つ。遠ざける。引き離す。
さく:切り離す。割る。引き裂く。切れて分かれる。割れる。裂ける。
さく:無事に。変わりなく。つつがなく。幸に。
さぐ:つるす。ぶら下げる。垂らす。おろす。低くする。後ろへさげる。退かせる。退出させる。格下げする。見下す。見下げる。侮る。
くらす:心を暗くする。悲しみに暮れさせる。
くらす:日が暮れるまで時を過ごす。過ごす。月日を送る。生活する。日が暮れるまで〜する。〜続けて1日を過ごす。
たつ:立ち上がる。起立する。現れる。立ち上る。飛び立つ。出発する。旅立つ。はっきり見える。時季がくる。時間が過ぎる。高く響く。評判になる。名声があがる。止まっている。位に就く。切れる。冴える。激昂する。設置する。有名になる。評判を立たせる。生じさせる。起こす。出発させる。派遣させる。飛び立たせる。時間を経過させる。突き刺す。閉じる。専門とする。維持させる。建てる。目や耳を働かせる。
たつ:切り離す。断ち切る。習慣をやめる。裁断する。
たつたやま:紅葉の名所。
おく:起き上がる。立ち上がる。目覚める。起きる。寝ないでいる。起きている。
おく:霜が降りる。置く。すえる。設置する。そのままにする。さしおく。ほおっておく。間隔をおく。隔てる。あらかじめ〜する。前もって〜しておく。
おく:奥まったところ。奥の方。奥の間。貴人の妻。奥方。心の奥。心中。終わり。末尾。将来。行く末。
かかる:ぶら下がる。もたれかかる。頼みにする。世話になる。頼る。すがる。目につく。心にとまる。停泊する。覆い被さる。降りかかる。関係する。かかわる。熱中する。悪いことが身にふりかかる。巻き添えをくう。危害を受ける。殺される。傷つけられる。襲いかかる。さしかかる。通りかかる。至る。なる。〜し始める。〜しそうになる。
かかる:このような。こんな。
しらくも:白雲
しらく:白くなる。興ざめがする。気分がそがれる。しらける。具合が悪くなる。決まりが悪くなる。気まずくなる。打ち明ける。明白にする。
しらぐ:たたく。鞭打つ。精米する。仕上げる。