後に梅の歌に追和する四首
梅の花夢に語らくみやびたる花と我思ふ酒に浮かべこそ
一に云ふ、「いたづらに我を散らすな酒に浮かべこそ」
〈万葉集 巻第五 雑歌 852〉
++++【日本古典文学全集 万葉集② (小学館)の訳】++++++
梅の花が
夢で語ることに
風流な花だと
自分では思っています
お酒に浮かべてください
また、
「むなしくわたしを散らさないで
お酒に浮かべてください」
+++++++++++++++++++++++++++++
□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;「梅花の歌三十二首」がまとめられた後に追加した四首
長屋王の変で後に残された子孫たちに追加で贈る四首
作者;内容的に憶良作か?
849~852の四首は、
大伴旅人のほか、山上憶良など複数の人が
交互に詠んでいるようにも感じられます。
四首とも作者は不明です。
うんざりするような理由でこの世を離れた
長屋王。
彼が夢で語ることには、
風流だと信じていた皇室だったけれど
皇室の不正で私たちは涙を流すことになった。
この世を離れさせられたのだ。
儚く散らした私たちの命を無駄にしないでほしい。
梅の花びらを酒に浮かべて
あの事件を思い出してくれることこそ、
成仏になるのだよ、と。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
849~852の四首は、
大伴旅人のほか、山上憶良など複数の人が
交互に詠んでいるようにも感じられます。
四首とも作者は不明です。
うむ;飽きる。嫌になる。うんざりする
うめく;(苦痛や感動などで)ううっと声を出す。低い声でうなる。ため息をつく。苦吟する。
はなる;遠ざかる。離別する
はな;鼻。端
いめ;夢
かたる;話す。親しくする
かたらく;語ることには
く;消える
みや;天皇。皇居。
ひ;道理に反すること。不正。具合の悪いこと
みやび;優美。風雅
みやびか;上品で優雅だ。風流だ。
たる;十分である。値する。満足する。垂れ下がる。したたる。完了助動詞
あれ;私。あちら。あなた
あれ;荒れ。生れ
もふ;思う
さけ;酒
うかぶ;浮いている。落ち着かない。不安定である。根拠がない。思い出される。思い浮かぶ。苦境から抜け出る。世に出る。成仏する。
いたづらに;無駄である。むなしい。儚い。何もない。暇である
ちる;散る。バラバラになる