後に梅の歌に追和する四首
残りたる雪に交じれる梅の花早くな散りそ雪は消ぬとも
〈万葉集 巻第五 雑歌 849〉
++++【日本古典文学全集 万葉集② (小学館)の訳】++++++
むら消えの
雪に交じっている
梅の花よ
早くは散るな
雪は消えても
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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;「梅花の歌三十二首」がまとめられた後に追加した四首
長屋王の変で後に残された子孫たちに追加で贈る四首
作者;表向きは旅人作、実際は憶良か
849~852の四首は、
大伴旅人のほか、山上憶良など複数の人が
交互に詠んでいるようにも感じられます。
四首とも作者は不明です。
うんざりするような理由でこの世を離れた
長屋王一家。
長屋王の生き残った子孫たちは
雪のような大粒の涙を流しながら
宮仕えし、ため息をついていることだろう。
雪が消えるように
梅の花びらも散り消えて
あなたたち(長屋王の子孫)の涙が枯れても
早まってバラバラになってはいけないよ。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
梅花の歌二三首の宴が終わり、
後日に追加して詠まれた歌。
作者は、大伴旅人か。
のち;あと。以後。将来。子孫。死後
うむ;飽きる。嫌になる。うんざりする
うめく;(苦痛や感動などで)ううっと声を出す。低い声でうなる。ため息をつく。苦吟する。
うた;和歌
ついわ;
つひに;最後に。終わりに。
つひゆ;衰える。疲労する。やつれる。
のこる;後にとどまる。残る。生き残る。死に遅れる
たる;十分である。値する。満足する。垂れ下がる。したたる。完了助動詞
ゆき;雪。泣いている。行く。逝く。白髪。花びら
まじる;入り混じる。混ざる。仲間に入る。宮仕えする。
うむ;飽きる。嫌になる。うんざりする
うめく;(苦痛や感動などで)ううっと声を出す。低い声でうなる。ため息をつく。苦吟する。
はなる;遠ざかる。離別する
はな;鼻。端
はやく;昔。すでに。じつは。もともと
はやし;早い。激しい。急だ。囃し立てる。引き立てる。もてはやす
な~そ;禁止
ちる;バラバラになる。散る
けぬ;消えてしまう