甲斐歌

よみ人しらず

甲斐が嶺をさやにも見しかけけれなく横ほりふせるさやの中山

 

〈古今和歌集  巻第二十   東歌       1097〉

 

 

++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++

 

甲斐の国の山々をはっきりと見たいものだ。

にもかかわらず、

心なく横たわって臥している

小夜の中山であるよ。

 

+++++++++++++++++++++++++++++

 

 

 

 

 

□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□

 

 

(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

題詞;甲斐国で詠んだ歌

 

作者;私の名は伏せておきます。

 

 

 

 

あなたが旅立っていった方向にある

 

甲斐国の峰をはっきりと見たいのに

 

思いやりなく横たわっている

 

小夜の中山のせいで

 

あなたの居る所がはっきりと見えません。

 

小夜の中山には、夜になると泣き声がするという

 

夜泣き石がありますが、

 

私も同じようにあなたのことを思って

 

夜ごとに泣いているのですよ。

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□

 

小夜の中山には、夜になると泣き声がするという

夜泣き石があります。

また、小夜の中山は、東海道の難所の一つです。

 

かひ;効き目。効果。成果。値打ち。山峡。谷間。山梨県

ね;峰。泣き声

さやに;明らかに。鮮やかに。はっきりと

しか;~たい。~してほしい。過去の助動詞。~か、いやない。

けけれ;心

こころなし;思いやりがない。人情がわからない。情趣がわからない。思慮が足りない。分別がない。不注意だ。

なく;泣く。無く

よこほる;山が横たわる。横になる

ふせる;伏せっている。横になっている。

ふす;押さえつける。隠す。潜ませる

さやのなかやま;東海道の難所

さやに;明らかに。はっきりと