常陸歌

よみ人しらず

つくはねのこのもかのもに蔭はあれど君がみかげにますかげはなし

 

〈古今和歌集  巻第二十   東歌       1095〉

 

 

++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++

 

筑波嶺のこちら側にもあちら側にも

木陰はたくさんあるが、

あなた様のお蔭を蒙るほど

安心できる蔭はありません。

 

+++++++++++++++++++++++++++++

 

 

 

 

 

□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□

 

 

(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

題詞;常陸国から都へ出仕するときの歌

 

作者;私の名は伏せておきます。

 

 

 

筑波の山は、恋の山。

 

男性と女性がいつもそばに付き従っています。

 

筑波嶺の山にはあちこちに物陰となって

 

人目につかない場所、「かげ」があります。

 

でも、あなたの「おかげ」、

 

恩恵に勝るかげはありませんよ。

 

そして、あなたのお姿に

 

勝る人は誰もいませんよ。

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□

 

筑波嶺は恋の山です。

常陸国から都に出仕する恋人を見送るときの

歌でしょう。

 

ひたち;茨城県

ひ;日。火

たつ;旅立つ。断ち切る

つくばね;山頂は男体、女体からなり、恋の山

つく;くっつける。身につく。備わる。感情が生まれる。後に従う。付き従う。寄り添う。態度が決まる。到着する。即位する。終わる。果てる。尽きる。水に浸かる。呼吸する。突く。ぬかづく。築く

このもかのも;こちら側とあちら側。両側。あちこち。そこここ

かげ;後ろ。物陰。人目につかない所。恩恵。おかげ。庇護

かげ;光。すがた。形。面影。痩せ衰えた様子。やつれた姿。影法師。影のように寄り添って離れないもの。虚像。霊。魂

ます;まさる。すぐれる