とりものの歌
よみ人しらず
みちのく安達のまゆみわが引かば末さへより来しのびしのびに
〈古今和歌集 巻第二十 神遊びの歌 1078〉
++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++
陸奥の安達の郡に産する檀の木で作った弓ではないが、
私が招いたら、今はもちろん
行く末までも寄り添ってください。
人に知られないように。
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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;神事に使われる弓の歌
作者;私の名は伏せておきます。
神事に使う
陸奥地方の安達の弓。
私がその弓を引きますと
三輪山の神が
敵からの恨みや危害を断ち切ってくれます。
この弓は
人生の晩年や衰退期であっても
頼りにすることができるものです。
そしてさらに子孫までも
深い関係を広げてくれます。
数多くの人々がこっそりと何度も寄ってきて
(弓の神力を)深く頼りにすることでしょう。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
和歌コードに訳すのが難しい歌でした。
「まゆみわが」のところに「みわ」の文字が隠れています。
三輪山(山全体が御神体)のことだと解釈しました。
神楽で使われる歌ですので
神の力を歌ったものでしょう。
み;身。命
みちのく;陸奥
みち;道路。途中。道理。道徳。教義。方法。満ちること
みちく;満潮になる
のく;立ち去る。退く。地位を離れる。縁が切れる。離す
く;消える
あだ;誠実でない。浮気だ。はかない。ムダだ
あた;敵。危害。恨み
たち;断ち切る。旅立つ
ち;千。多数。血液。血筋。血統。母乳。知識。知能。理解力。知恵
まゆみ;檀で作った丸木の弓
みわ;お神酒。三輪山
わが;私が
ひく;退く。引き寄せる。引き抜く。取り去る。弓をひく。導く。誘う。心をひきつける。演奏する
すゑ;末端。木の枝先。道の終わり。山の果て。将来。子孫。晩年。衰退期。末期。結果。あげく。下位。
さへ;さらに~までも。~でさえ。~だけでも
よる;基づく。かかわる。応じる。近づく。集まる。寄り合う。立ち寄る。好意を寄せる。心が傾く。頼りにする。寄りかかる。よじれる。
こし;濃い。関係が深い。来た。
しのびしのび;人目につかないように。こっそりと。
のび;野焼きの火
のぶ;長くなる。伸びる。延期になる。逃げ延びる。のびのびする。ゆったりする。広げる。伸ばす。
しのに;数多く。何度も。しきりに