桂に侍りける時に、七条の中宮のとはせ給へりける御返事に奉りける
伊勢
久方の中におひたる里なれば光をのみぞたのむべらなる
〈古今和歌集 巻第十八 雑歌下 968〉
++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++
月の中に生育しております桂という名を持つ
桂の里に住んでおりますので、
月の光、すなわちお后様のご慈愛のみを
頼りにしているのですよ。
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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;京都の桂にいた時に、藤原温子が
どうしているかと尋ねてくださったので返事をさせていただいた
作者;伊勢
久しぶりにこちらの方(桂)へやって来ました。
月の内部に生えている桂は、
月の光を頼りにしていますね。
私が生まれた故郷では
里の親が年老いてしまいました。
親は、私がお仕えした藤原温子様の威光だけを
拠り所にし、信頼しているようです。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
かつら;月の世界に生えている木
ひさし;久しぶりである。しばらくぶりだ
はべる;おります
かた;方向。場所
なか;内部。関係
おふ;老いる。生まれる
さと;故郷
ひかり;栄光。誉れ。威光
たのむ;頼みにする。仕える。信頼する
べらなり;~ようだ