題しらず

よみ人しらず

いしま行く水の白浪立ち帰りかくこそは見めあかずもあるかな

 

 

〈古今和歌集  巻第十四   恋歌四    682〉

 

 

++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++

 

石と石との間を流れ行く水の白波が石にぶつかっては戻り、

また再び流れて行くように、

何度も何度も繰り返してこのようにお逢いしましょう。

しかしそれでも飽くということはないのですよ。

 

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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□

 

 

(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;亡くなった人のことを詠む

 

作者;私の名は明かさないでおきます。

 

 

(幼くして子を亡くした母、伊勢は)

けなげにも、

墓石の周囲を泣きながら何度も行き来している。

まるで、波が寄せては返すように

繰り返し、墓石のところに行って

泣きながら供養している。

亡き我が子への情愛をかけて供養している姿は

さすが、天皇のお妃でいらっしゃる。

こんなふうに、眠らないで夜を過ごし、

名残惜しい気持ちで飽きることなくいつまでも

供養をして、

お墓のところで時間を過ごしておられます。

 

 

 

 

□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□

 

この前の歌681番と関連して詠まれています。

幼い子を亡くした伊勢がどのような状態になっているかを

宮中で伊勢の近くに居た人物が詠んでいます。

 

いし;良い。優れている。殊勝だ。けなげだ。美味しい。美味だ。

いし;岩石。鉱石。庭石。宝石。墓石

ま;間

まゆ;眉

いく;目的地に行く。天国に逝く

ゆく;流れる~。つづける

みず;逢えない

みず;泣いている

しらなみ;白く見える波

しらく;白くなる。白髪

なみ;波。しわ。並ぶ。列になる

たちかへる;引き返す。戻る。浪が寄せては返す。繰り返す

かく;このように。こう

かく;破損する。壊す。かつぐ。吊り下げる。関係する。固定する。つなぐ。かけわたす。覆う。かぶせる。水を浴びせる。兼任する。対比する。話しかける。情愛をそそぐ。思いをかける。目をかける。

かぐ;供養を行うこと

みめ;見た感じ。見た目。容貌。器量。名誉。面目

みめ;天皇の妻の敬称。お妃。

あかず;飽きない。嫌になることはない。名残惜しい。不満足だ

あかす;眠らないで夜を過ごす。

ある;生まれる。荒々しくなる。荒廃する。しらける。遠のく。離れる。

あり;存在する。生きている。その場にいる。時間が過ぎる。栄えて暮らす。