題しらず
よみ人しらず
北へ行く雁ぞ鳴くなるつれてこしかずはたらでぞ帰るべらなる
この歌は、ある人、男女もろともに人の国へまかりにけり。
男まかりいたりて、すなわち身まかりにければ、
女ひとり京へ帰りける道に、
帰る雁の鳴きけるを聞きてよめるとなむいふ。
〈古今和歌集 巻第九 羈旅歌 412〉
++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++
北へ帰ってゆく雁が鳴いている。
昨秋連れてきた数が足らないのが悲しくて
鳴きながら帰るようだ。
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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞と作者;私の名は伏せておきますが、黄泉の国に逝った人に贈る歌
日本に来て越冬し、春に北に帰って行く雁が鳴いている。
私と一緒にこの国へ来た彼は亡くなり、私も泣いている。
一緒に来た人数が、帰りには足らなくなっているのだけれど、
雁が鳴きながら帰るように、
私もまた連れを亡くし、泣きながら都に帰るのです。
この歌は、ある人が、
男女一緒に他の国に赴いたのだが、
一緒に来た男が到着するとすぐに亡くなってしまった。
女が一人で都へ帰る道中、
帰って行く雁の群れが鳴いているのを聞いて
詠んだ歌だということである。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
よみびと;黄泉の国に逝った人
北へ行く雁;雁は、秋に日本に飛来し、越冬して春に北の国に帰る渡り鳥
なく;泣く。亡く
つれ;同行者
こし;越の国
こす;行く。来る
かず;人数。数
たる;相応する
べらなり;~ようだ
もろともに;一緒に
まかる;行く。亡くなる
すなはち;すぐに