山にのぼりて、帰り詣で来て、
人々別れけるついでによめる
幽仙法師
別れをば山の桜にまかせてむとめむとめじは花のまにまに
〈古今和歌集 巻第八 離別歌 393〉
++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++
別れ方をば比叡山の桜に一任してしまおう。
もっと引き止めようとか、
もう引き止めないでおこうとかいう判断は、
山の桜に引かれて帰るか帰らないかに
そのまま任せよう。
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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;比叡山に参詣して、帰りに花山に参り来て、
人々が別々の方向に帰って行った折に詠んだ歌
作者;幽仙法師
どのタイミングで別れを言おうかについては、
それぞれの人の自由にして、任せましょう。
花山に泊まることを勧めようか、
それとも引きとめないでおこうかについては、
私の判断は手放して、
それぞれの人の判断に任せます。
現世との別れ(死ぬこと)は、
誰にとっても必然です。
山の桜が散るか散らないかは
それぞれの花に任せられています。
同じように、
人の命も、いつこの世を離れるかは、
運命に任せるしかありません。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
幽仙法師は836~900年に生きた人。
僧正遍照と同じ時代に生きていますので、
前の歌に続いての関連テーマだと思われます。
前後の歌の関係から見ると、
仁明天皇の死にまつわり、
詠まれたものだと思われます。
やま;比叡山。たくさん。陵。
のぼる;宮中や貴人のところに行く
まうでく;参上する。伺う
ついで;折。機会
わかれ;離別
さく;裂く。放く
まかす;自由にさせる。任せる
とむ;行かせない。制止する
はなつ;手放す。自由にする
はなる;遠ざかる。離れる
まにまに;~に任せて