藤原これをかが武蔵介にまかりける時に、
送りに「あふさかを越ゆ」とてよめる
つらゆき
かつ越えて別れもゆくか相坂は人だのめなる名にこそありけれ
〈古今和歌集 巻第八 離別歌 390〉
++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++
逢坂とは文字通り逢う所だと思っていたのに、
いっぽうではこのように関を越えて別れて行くのだなあ。
「逢坂」というのは帰って来てまた会う将来だけを
期待させる名であったのだなあ。
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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□
(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)
題詞;藤原惟岳が武蔵(関東地方)の国司次官として地方へ下る時に、
見送りに出かけた。逢坂を越えたときに、
「仕事では一緒に沢山のけわしい坂を越えたね」と
彼が言ったので詠んだ歌。
作者;紀貫之
次から次へと仕事のことで、色々な坂を一緒に乗り越えてきた
あなた(藤原惟岳)と別れ別れになるのは寂しいよ。
「あふさか」という名は、
「互いに来合せて出会い、多くのことに耐えてやり遂げる」という地名だね。
だから私はあなたを「あふさか」を越えるまで見送ったのだろうね。
武蔵の国に行っても、早く仕事に慣れて多くの人に頼もしく思われるよう
期待していますよ。
□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□
藤原惟岳の詳細が分かりませんが、
紀貫之と共にみやこで仕事をした人物でしょう。
和歌コードで読み解くと、
色々な仕事の山を共に乗り越えた仲間であることが
分かります。
あふ;出会う。来合わせる
あふ;一緒に~する
あふ;耐える。こらえる。完全に~しとげる
ふさ;たくさん。全部
さが;宿命
さがし;けわしい。危ない
まかる;みやこから地方へ下る
おくり;見送り
こゆ;越える
かつ;次から次へと
わかれ;別離
ゆく;出かける。たちさる
ひとだのめ;人に頼もしく思わせること
な;名前。噂。評判
めなる;物事に慣れる
あり;~である