藤原後蔭がからもののつかひに、長月のつごもりがたにまかりけるに、

うへのをのこども酒たうびけるついでによめる

ふぢはらのかねもち

もろともに鳴きてとどめよきりぎりす秋の別れは惜しくやはあらぬ

 

〈古今和歌集  巻第八  離別歌    385〉

 

 

++++【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】++++

 

私たちと一緒に後蔭様の出発を鳴いてとどめてほしい。

こおろぎよ。

お前たちにとっても、秋との別れ、そして秋に人と別れるのが

惜しいはずなのだから。

 

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□□□□□□□【和歌コードで読み解いた新訳】□□□□□□□

 

 

(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

題詞;894年9月末、藤原後蔭が、遣唐使が廃止されるときの使者として

(または、唐からの舶来品を扱う仕事で)太宰府に下ることになった時のこと。

殿上人の男たちが酒(さく;遠くへやる)とい意味で酒をくださった。

その機会に詠んだ歌。

 

 

作者;藤原兼茂

 

 

私(藤原兼茂)も、後蔭も二人とも涙脆いのです。

 

すっかり泣いて涙が尽きたらもう区切りをつけて

 

泣き止み、後蔭を気持ちよく送り出そうと思います。

 

秋の別れだからといって特別に名残惜しいだろうか。

 

いや、そうではないのです。

 

(本当は、後蔭の出発を泣いて留めたい気持ちだが、

泣きたい気持ちをこらえて我慢し、

太宰府に行って頑張ってくるように、と励ましている。)

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□【和歌コード訳の解説】□□□□□□□

 

詞書でわざわざ長月(9月)と言っているので、

9月に何か出来事があっただろうかと、調べてみました。

すると、894年9月に遣唐使が廃止されています。

「からもの」は、「唐物」で、舶来品の意味があり、

藤原後蔭は、遣唐使関係の仕事で太宰府に下った

可能性があります。

 

からもの;舶来品

つかひ;召使い。使者

ながつき;9月

つごもり;末日

まかる;地方へ下る

うへのをのこ;殿上人

さく;遠くへやる

ついでに;この機会に

もろともに;一緒に。そろって。

もろし;涙もろい。心が傷つきやすい

もろ;ふたつの。両方の。多くの~。一緒の~

とも;共。友

なく;泣く

とどむ;中止する。制止する。止める

きり;泣いている

きり;区切りをつけること

きる;すっかり~する。終わる。尽きる

あき;7月から9月

わかれ;離別

をし;名残惜しい

やはあらぬ;反実仮想。~だろうか、いや、そうではない。