冬の歌とて詠める
源宗于
山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば

古今和歌集 巻第六 冬歌)

 

=====【教科書『国語総合』(桐原書店)の訳】=====

 

冬の歌として詠んだ(歌)
源宗于
山里は、冬が特に寂しさがまさることよ。
人の行き来もとだえ、草も枯れてしまうと思うと。


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☆☆☆☆☆☆【和歌コードで読み解いた新訳】☆☆☆☆☆☆


(※『和歌コード』とは、直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。
この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った
しじまにこのオリジナル訳です。)

 

題詞;冬の歌として詠みました

 

作者;源宗于朝臣

 

 

私(源宗于)がお仕えしておりました

醍醐天皇は、

930年9月29日、

あと数日で冬になるという日に

永遠の世界へと逝かれました。

 

山里は、

いつもひっそりとしていますが、

冬になるとますます寂しくなります。

 

人は来なくなるし、

草も枯れてしまうからです。

 

醍醐天皇の陵のある場所も

これから冬を迎えます。

 

天皇が山(陵)に入ってしまわれ、

私たちは、心が満たされず、

寒々と寂しい気持ちでいっぱいです。

 

冬という季節は

人の訪れもなくなるし、

草も枯れてしまうので

ますます寂しい気持ちに拍車がかかりますね。

 

天皇がおられないだけでも

寒々として満たされない気持ちに

なっているというのに、

心を慰めてくれるものが無いものですから。

 

 

【和歌コード訳の解説】

 

醍醐天皇は、9月29日に崩御されています。

「秋」の最後の日であり

明日から「冬」という時です。

作者の生没年や仕えていた天皇の周辺を調べると、

この歌は醍醐天皇の崩御を悲しんでいると

読み取れます。

 

源宗于:生年不詳〜939年11月23日。

光孝天皇の孫。

是忠親王の子。

宇多天皇・醍醐天皇・朱雀天皇に仕える。

三十六歌仙のひとり。

紀貫之や伊勢との交流が見られる。

 

醍醐天皇:885年1月18日〜930年9月29日(享年46)。

在位:897年7月3日〜930年9月22日。

宇多天皇の第一皇子。

 

やまざと:山中の村里。山荘。

 

やま:山岳。比叡山。築山。墓地。天皇の陵。多く積み重なっていること。憧れたり仰ぎ見たりするもの。物事の絶頂。重要な段階。

 

さと:人里。集落。いなか。自宅。生家。実家。養家。俗世間。

さと:さっと。ぱっと。

 

とは:永遠。

 

ふゆ:陰暦の10月から12月まで。

 

さびし:ひっそりとしている。ひっそりとしていて寂しい。なんとなく寒々としている。心が満たされず楽しくない。貧しい。

 

まさる:強まる。増える。すぐれる。秀でる。

 

ひとめ:他人の見る目。はため。世間の目。人の出入り。人の訪れ。人の往来。

 

ひとめ:ちょっと見ること。一度見ること。目全体。目の中いっぱい。

 

ひと:人間。世間の人。大人。立派な人。人柄。性質。身分。他人。あの人。従者。あなた。

 

とむ:行かせないようにする。進ませない。止める。制止する。後に残す。とどめる。停泊させる。宿泊させる。

 

とむ:たずね求める。さがす。

 

めをとむ:心や目に留める。関心をもつ。注目する。

 

め:女。妻。夫人。めす。

め:目。視線。まなざし。目つき。見方。見る立場。出会い。事態。境遇。顔。姿。隙間。網目。サイコロの目。

め:わかめ。

 

くさ:草。

くさ:原因。たね。対象。種類。

くさし:臭い。怪しい。うさんくさい。

 

かり:一時的なこと。間に合わせであること。かりそめ。

かり:雁。霊魂を運ぶ鳥とされる。

かり:狩り。鷹狩り。桜狩りやもみじ狩り。

 

かる:枯れる。干からびる。干上がる。涸れる。

かる:離れる。遠ざかる。間をあける。隔たる。足が遠くなる。疎遠になる。よそよそしくなる。

かる:草などを切り取る。

かる:借りる。

かる:追い払う。追い立てる。馬などを走らせる。

 

ぬ:濡れる。寝る。

 

おもふ:思う。考える。思案する。愛しく思う。恋をする。懐かしく思う。回想する。望む。願う。希望する。心配する。悩む。嘆く。苦しく思う。予想する。〜そうな顔をする。