雪山での事故の話 | My Snowboarding Life

雪山での事故の話

先日、新潟県の、とあるスキー場で、事故は起きました。


その日は、朝はゲレンデクルージング、昼前に装備をしてお手軽BC、戻ってきて、車に重たい荷物を置いてから、ゲレンデアクセスできるツリーランという流れで滑っていました。


事故って、最後の一本とかで起きるんですよね。

何故なんでしょうか。


その日も、最後の一本で起きました。



仲間6人でツリーランしてました。

私は、よく知らないスキー場だったのですが、感覚的に遊べそうな地形で飛んでみたり楽しんでました。


ふと横目に仲間の誰かが転倒したのが見えました、なんとなくその方向に寄ってみたら、調子良さそうなマッシュがあり、「ここからじゃマッシュ飛べないや」なんて思いながら、ふと、おかしな事に気付いた。


さっき横目に見えた、転倒した誰かの姿が見えない。

もう少し寄ってみたら


近くにK君がいて「わかな、ちょっとまて」


K君の視線の先には、3〜4m程距離を置いてスノーボードのソールだけが見える。


そのソールに向かってK君が声をかけた。


「R君、大丈夫か?」




返事がない。


でも、もぞもぞ動いてるのがわかる。




どういう状況なのか、よくわからないけど、雪に埋まっているんだと思って、私も声をかけた。


「息できてる?」


返事はないけど、動いてる。




数秒経って、もう一度


「ねぇ!!息できてる???」





返事がない。




動かない。



ヤバいやつだ!!



転倒してから何秒たった!?




私は急いで自分のビンディングを外して駆け寄った。

もう1人も駆け寄った。


近くまで来てわかった。


R君は、穴に落ちたんだ。


しかも、逆さまに。


かろうじて、板が引っかかって、完全に落ちたわけではなく、逆さ吊り状態。




上から見た図はこんな状況。



近づいたけど、どうしたらいい?


とりあえず斜面の下に廻った方がいいのか?



そしたらK君



「雪が崩れるかもしれないから、無闇に近づくな!!」



はっと思ったら、もう1人近づいた人の足元の雪が少し崩れて、穴の中に落ちていった。



少ししたら、穴の中からR君の声が聞こえた


「大丈夫ですー。 息できてます。」



体と呼吸は無事なんだと、ひとまず安心。


穴はおそらく2m以上ある深さで、下にある、硬い雪の塊が、逆さ宙吊りにされたR君の手の支えになっているようだった。



それから、みんなでそっと近づいて、救助作業。


BC装備のバックパックを車に置いて滑りにきたことを、この上なく後悔した。

あれがあればなんとかなったのに。。。



そこでK氏が自分のジャケットを脱いで、袖の部分に結び目を作り、結び目を下にして穴の中に垂らす。


「R君、つかめるか?」


なんとか掴めたようで、引っ張り上げてみるも、ウェアの素材が弱く、伸びて、引っ張る力がうまく伝わらない。


K君、「このウェアじゃだめだ。誰かウェア貸して!」




私のウェアしかないでしょ!


norronaだもん!! 


これ強いし!!


これ、絶対壊れない!!


壊れたって、この人を助けれるなら、名誉でしょ!!



それまで、寒い寒いと言いながら滑っていたけど、躊躇なく、脱いだ。

寒さは全く感じなかった。


一肌脱ぐとは、この事なのか、


それとも、脱ぐとは、プロスノーボーダー、ハマワカナが脱いだ。とグラビア的写真付きでニュースに出る事なのか。


どうでもいいけど、脱ぐ時に外したグローブの片方は、踏み潰されて、雪に埋まり、しばらく行方不明でした😂


さて、norronaジャケットをつなぎ合わせて強度を増した引っ張りアイテムで、もう一度試してみた。

かなりイケる!! norrona最強!!


と、ちょっとまてよ、と一度引っ張り作業を中断して、K君が携帯を出し、滑り終わって下で休んでる別の仲間に電話した。

「R君が穴に落ちた。今すぐ、装備の入ったバックパックと、ロープを持って上がってきてくれ。場所は○○」


後にわかったのは、現場で救助に当たっている5人全員が、穴に落ちる場合もあると想定して、下にいる仲間に状況を伝えたんだと。



すげぇ、そんな事、考えもしなかった💦



そんなこんなで、もう一度引っ張り作業。



K君ともう1人は、R君が掴んだウェア(norrona付属最強引っ張りアイテム)を引っ張る作業、私はその補助、後の2人は引っかかった板をうまくコントロールする役割。


K君と、もう1人が、だいぶ上まで引っ張り上げた時、R君のもう片方の手が上がってきた。


私は、すかさず、その手を掴んだ。


その時の責任感ったら、ヤバいよね。



「この手を離したら私は一生後悔するだろう。」



言葉だけ聞いたら、恋愛小説のなんちゃら



実際は、生命と筋力のなんちゃら



とりあえず馬鹿力を出すための掛け声とともに、掴んだ手を引っ張った


「うんぬぉぅーーーーーーっっ」




だいぶ上がった、R君、穴の上の方で大の字😂



次は、足元コントロールメンツが、ゆっくり、いいタイミングでR君のビンディングを外す。



そして、引っ張り上げメンツ3人で


「うぉあーーーーーーっっっ!!!!!」



上がったーーーーーーー!!!


産まれたーーーー!!!!


R君、生還!!!



この時の、R君の笑顔を見れた喜びったらハンパないよね。



出産を終えた母親の気持ちみたいな。





この事故に対しては、色んなところで、賛否両論あるかもしれませんが、私としては、すごく貴重な経験でした。

もしも、R君が無事でなかったとしたら、貴重な経験なんて、とても言えなかったし、笑顔なんて作ろうとしても作れない。

R君が無事だったから、今、笑えている。


このブログには、その時私が思った事と、その時の状況を書きました。


何が大事なのか、何がいけない事なのか、どうした方がいいのか、山に行く時に気を付けるべき事は、などなど、色々あるかと思いますが、一つ、確実に言える事。


それは、norrona lofoten gore-tex pro jacket は、人を助ける事もできる、最強ウェアだという事です。

この素晴らしいウェアを着てスノーボードができる私は、最高に幸せです。