漢方医学では、冷えを大きく2つに分けます。陽証の冷えと陰証の冷えです。陽証とは、身体全体としては熱が優勢な状態を指します。陰証とは、冷えが優勢な状態を指します。熱が優勢であるけれども、部分的には冷えが起こりうるのです。例えば、手先足先は冷えているけど、顔が火照っているとか。部分的には冷えているけど、他の部分は熱を持っているので、差し引きで熱が優勢。それが陽証です。陰証では、より広範囲に冷えがあります。例えば足が冷えるにしても、足先にとどまりません。太腿から下、足先まで冷えるといったように。
陽証の冷えは、2つ原因が考えられます。人の生命活動の源である「気」が頭に登ってしまう状態(上衝:じょうしょうと読みます)か、血がどこかで滞ってしまい、そこから先が温まらない状態(瘀血:おけつと読みます)です。
陽証の冷えに対しては、気が正常になるようにする薬、あるいは血が流れやすくする漢方薬を用います。
陰証の冷えは、気を作り出す力が弱まっていることが原因になります。気は主に胃腸で作り出されます。そのため、陰証の冷えに用いる漢方薬の殆どが胃腸の力を回復する作用を持っています(補脾益気ほひえっきと呼びます)。弱ってしまった胃腸の力を回復させると共に、温める力のある生薬(漢方薬に含まれる原材料のこと)が含まれているために、直接身体を温めます。温める力のある生薬としては、乾姜、附子、山椒などがあります。
陽証の冷えに用いられる代表的な漢方薬としては、四逆散、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯などが挙げられます。
陰証の冷えに用いられる代表的な漢方薬としては、人参湯、小建中湯、当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが挙げられます。