メンタルヘルスファーストエイドの5つのステップについて説明いたします。
メンタルヘルスファーストエイドは、(1)自傷他害のスクをチェックしましょう、(2)判断(んだん)・批判せずに話を聞きましょう、(3)安心(んしん)と情報を与えましょう、(4)適切な専門家のもとへ行くよう(ポートを受けるよう)伝えましょう、(5)自分で対応出来る対処法(セフ・ヘプ)を勧めましょう、の5項目からなります。其々の一文字をとって、「り・は・あ・さ・る」と覚えましょう。(4)(5)語呂合わせがちょっと苦し紛れっぽいかも。

(1)「り・は・あ・さ・る」のり
自傷他害のリスクをチェックしましょう、という内容です。具体的には自殺の方法について、計画を練っているか、実行する手段を有しているかどう、過去に自殺未遂をしたことがあるかを評価します。前回でも書きましたが、いきなりこれを聞くのははばかられるでしょう。精神科医でも自殺の危険性について患者さんに確認するときには、一拍置いてから、落ち着いて聞くようにしています。まずは、信頼関係を構築するように、他の項目から尋ねるようにしましょう。聞く際には「死にたいと思ったことはありますか?」あるいは「消えたいと思ったことはありますか?」などはっきり聞いたほうがいいです。死にたいと思っている人に自殺について確認することで自殺に追いやるということはありません。むしろ、死にたい気持ちを確認しないことで、相手をかえって絶望させてしまったり、助けを得られないという気持ちにさせてしまうと言われています。

(2)「り・は・あ・さ・る」のは
判断や批判をせずに相手の話を聴きましょう、ということです。今どのような気持ちなのかを相手に話してもらいます。相手を責めたり、弱い人だと決めつけるようなとはしないでください。じっくりと相手の話を聴くこと自体重要な支援になります。

(3)「り・は・あ・さ・る」のあ
安心と情報を与えましょう。本人の悩みは、弱さや自身の性格の問題ではなく、医療の助けが必要な問題であること、あるいは、社会的なサポートを受けられる問題であることを説明しましょう。次の社会資源につなげてあげることで相手に安心を与えてあげてください。

(4)「り・は・あ・さ・る」のさ
サポートを受けられるよう、専門家のもとに行くよう勧めましょう。医療機関、司法
あるいは福祉の担当部署に行くよう勧めましょう。本人が一人で行くのをためらうようなら、一緒に行くことを提案してみるのも一つのアイデアでしょう。



(5)「り・は・あ・さ・る」のる
自分で出来る対処法(セルフ・ヘルプ)を勧めましょう、の「る」です。軽い運動は気分転換に有用です。そのほか、リラクゼーション法、入浴でも構いません。これらによって抱えている症状が軽減する場合があります。他に、自助グループに参加することも対処法の一つです。

詳しくは、「専門家に相談する前のメンタルヘルス・ファーストエイド:こころの応急処置マニュアル」(ベティーキッチナー著,創元社,2012)をご参照ください。