入梅前の快晴日の6月14日朝、宮城・岩手地震が起きた。関係者と連絡をとりながら、現場直行が不可能と判断したため、衆議院議員同期で、わたしの生まれ故郷を地盤としていた荒井広幸参議院議員が企画してくれた、第2回「ふるさと元気アップ研修会」に参加した(第1回は5月9日開催)。当日は、荒井広幸後援会と公明党福島県本部議員団約60名が参加した。

1.「小収店」視察
 最初に、小高町の「小収店」を訪ね、運営体「企業組合おだかAMO」代表理事と事務局長が事業経緯を説明してくれた。
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 平成17年開業した「小収店」は、名前の通り、小さく集める店である。毎日、70人強の近隣の町民が、1回に平均7kgのごみを持参し、1kgの生ごみが3ポイント、その他のごみは1ポイント、エコマネーとして、店内のパソコンに入力される。500ポイントに達すると、500円の商品券がもらえる。持参ごみは26種類に分類されているため、そのまま資源として売却でき、19年度は64万円の収入となった。現在、600世帯(小高町は3,300世帯)の市民が登録している。5月9日視察した、福島県須賀川市の(有)ひまわりは、小収店が「廃油」回収を行えば、自社VDF工場で活用したいといっており、27番目のごみ資源化が実現する。

 生ごみは、生ごみ液化プラントに入れ、24時間後には液肥になる。沖縄から調達した黒糖液20kg(コスト5千円)を混ぜ、発酵効果が強くなり、100kgの液肥ができる。この液肥を14の農家が活用し、そこから有機野菜が生産される。その一部が「小収店」で販売される。19年度の直売野菜利用料(販売金額の1割)は38万円であった。
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 事務局長の説明では、小収店には、朝6時から午後2時まで、毎日一人のスタッフだけで運営されている。運営費は、時給700円、年間200万円の人件費を含め、600万円かかる。液肥プラント等の減価償却費を入れても、年間1千万円くらいの事業費と推算した。

 通常、ごみ処理に要する費用は、1人当り1万円であり、上記600世帯の平均家族数が3人とすると、年間1800万円税金が使われる計算になる。開店中はいつでもごみを持ち込むことができ、町民にとっては行政が指定する時間に拘束されないため、重宝がられている。同時に、行政のごみ回収コストが節約できるため、大幅な行政コスト削減になる。更には、ごみの最終処分場は不要となり、燃やすごみ政策を転換すれば、環境共生資源に生まれ変わる。

 昼食を兼ねた勉強会では、上記液肥を使った有機野菜が出され、にんじん、きゅうり等、全てが甘かった。ある生産者に聞いたところ、本人は病弱で、多くの薬を飲んでいたが、有機農業と同時に、その食べ物を常食すると、健康体になったと喜んでいた。更に聞くと、手間が大変であるが、たい肥も使いながら、土が軟らかくなったとのことである。化学肥料を使うと植物が出す匂いがなくなり、害虫が寄り付かなくなるとのことである。

2.おだかe-まちタクシー
 平成11年9月、住民1,300名の署名提出を受け、福祉バス導入の検討を行った。その結果、町がバス2台所有し、直営運行した場合2,700万円、運行を民間業者に委託した場合2,300万円かかることがわかった。その後、ニーズ調査も行い、交通不便者の女性の高齢者を支援する交通システムの構築に着手した。

 e-タクシーの提案者である福島大学の奥山教授からの提案は、「利用したい人の要望(デマンド予約)を時間ごとにプールし、それを効率よく乗り合い配車できる台数分だけ待機車両(空車)を借り上げ、低料金で個別から個別まで送迎する便利な乗り合い交通手段」の開発に着手し、「新多目的交通システム」が誕生した。
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 システムは、NTT東日本の支援を受け、1千万円の費用で完成し、平成15年4月から本運転開始した。小高町商工会が事業主体となり、小高町内にある2社のタクシー業者からジャンボタクシー2台と通常タクシー2台の計4台を借り上げ運行している。
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 「バスより便利でタクシーより安く、戸口から戸口までの送迎」を基本に、30分前の電話予約で、?だれでも予約できるが、小高区行政区内のみ運行、?料金は300円と100円の2料金体制、?エリアごとに複数人の相乗り原則、?午前8時~午後4時まで(土日祝祭日運休)の運行体制となっている。
 平成18年の補助金は、年間1千万円で、当初見積もりの3分の1の負担ですんでいる。
 現在では、全国34箇所がデマンド予約管理システムの導入が始まっている。
 
 上記2例とも、奥山教授の提案・指導によるものであり、実現のため、いままで小高町に200~300回来ているとのことである。さらに教授は、行政サービスの供給側からの発想でなく、住民・利用者のニーズを実現することで、従来とは全く異なる行政サービスシステムが生まれることを強調していた。

 荒井広幸参議院議員は、早稲田大学教授にもなっており、パワーポイントを使った彼の総括的なプレゼンテーションは、福島弁丸出しで、ユニークな表現ながら、具体的政策提言も行い、良くまとまっていたと感心した。このような貴重な研修会を企画してくれた、「荒井広幸参議院議員」に深く感謝したい。

以上