私は、携帯電話を持つようになり、十二年が経ちました。この間、いくつかの機種に切り替えましたが、機種を変更するたびに、コンパクトで、機能が便利になるのに驚いています。
 特に驚いたことは、四年前にサンフランシスコの近郊にあるシリコンバレーを訪問した時でした。訪問目的は、現在では一般的となったFOMA等の第三世代と呼ばれる携帯電話が、米国でどのように広がってゆくかを見極めるためでした。当時、米国は、車社会のためか、通勤にもパソコンを所持し、その結果、インターネットが日常的に使われ、画像を送ることができる第三世代型携帯電話のニーズは多くありませんでした。しかし、日本でまだ出回っていないFOMAを現地で手に触れた時には、いよいよブロードバンド時代が幕開けしたことを実感しました。
第三世代の携帯電話の特徴は、デジタル回線のため、従来より多くの情報を送ることが出来るため、相手の顔を見ながら会話を楽しめようになりました。そのころ、日本ではこの第三世代の出始めで、値段的にも高価でした。たまたま、その時、米国で同行した二人が結婚することになり、結婚祝いにこの携帯電話をプレゼントしました。
 熱々のカップルがさぞかし使っているだろうと期待して、新郎にその後の利用状況を確認したところ、新郎が携帯電話で監視されるのはいやだったらしく、従来の二世代携帯電話をあえて使用していました。
 それはともかく、我が家も遅ればせながら、一年半前に夫婦して購入しました。その結果は、利用できる機能が格段に増え、かえってそれが重荷になり、十分に活用できずに現在に至っていることでした。「シンプル・イズ・ベスト」の格言はどの時代でも真実でした。
 さて、私は年二~三回、仕事で海外に出ます。その際に不便に感じるのが、日本の携帯電話が海外では使えないことでした。しかし、先ほどのFOMAは、電話機の中にあるチップを、海外で使える携帯電話に入れると、自分が入力した電話番号がそのまま使え、また、日本からの電話が自動的に海外にいる私の携帯電話につながることが判り、昨年十月の欧州出張の際に、初めて使ってみました。
 その携帯電話は、成田空港の携帯電話カウンターに行き、簡単な手続きで借りられました。最初にスウエーデンに到着し、早速、借りた携帯電話で現地の旅行代理店に連絡すると、簡単に通じました。この時、初めて、第三世代の携帯電話を使ってよかったと思いました。
しかし、時代の流れは速いもので、海外で使える携帯電話にわざわざ換えるのは、既に古い方法であることが、その三日後、ベルギーに移動した時に判りました。
ベルギーでは、元同僚の会計士と会うことになりました。彼は、私が二十年前にロンドン駐在した時の同僚であり、現在、毎月、日本と欧州を往復しているとのことでした。その彼も、私が成田で借りた携帯電話より、ややスマートな携帯電話を持っていました。そこで、私が、今回持参した携帯電話を得意げに見せると、その彼は、「その機種はもう古いですよ」との一言でした。好奇心の強い私は、何が違うのと尋ねると、彼は、「私の携帯電話は日本で使っているものです」との回答でした。
この時、一瞬、理解に苦しみました。詳しく説明を聞くと、ローミング・サービスという機能があり、この携帯電話が、訪問国の現地で使われている携帯電話回線にアクセスし、その回線を使い、日本の携帯電話会社の機能にアクセスしてくれるから、ベルギーにいても、メモリーにいれている電話番号を出し、そのまま電話をかけると、日本に自動的につながってしまうとのことでした。日本から来るメールも留守電も、海外で拾うことが出来るため、この携帯電話を持っていると、海外にいることを忘れてしまうほどでした。
 今回、ゴールデンウイーク中に、ニューヨークとワシントンDCに出張しました。その二日前にこの携帯電話を購入し、まさに、ベルギーで聞いたことを実験しました。やはり、日本で使い慣れた携帯電話がそのまま海外でも使える以上の便利さはなく、買ってよかったと本気で思いました。
 ところで、先ほどのベルギーでは、私が所持した携帯電話の電源を切らずに寝てしまい、夜中、突然の日本からの電話は、時差ボケの私を苦ませる結果となりました。
 この経験があり、今回の米国訪問では、携帯電話を切らずに、マナーモードにしていたため、留守電が入っても、先ほどのローミング・サービス機能を使い、留守電再生やメールを開くことが出来ました。
 やはり、新しい携帯電話は便利です。この便利な機能を活用し、さらに社会に役に立つ仕事に挑戦し続けて参ります。