日本の夏以上に蒸し暑いムンバイから、インドで一番気候が温暖で過ごしやすいバンガロールに移動したのは、10月19日(木)でした。

1. セント・ジャーミン学校
 バンガロール到着後最初の視察は、バンガロールのIT視察を案内してくれた、JINインフォメーションセンターのアレックス・ヴイルキー社長の出身校である、クリスチャン系のセント・ジャーミッシュ学校でした。
 小学校6年(義務教育)、ミドルクラス2年、ハイクラス2年、専門課程2年の12年生課程となっています。生徒1,650人および教師58人がおり、1月の授業料が約1万5千円の中クラスの私立学校とのことです。
 休み時間になると、小学生は元気に狭い校庭を走り回り、好奇心旺盛のためか、私が校舎の2階から手をふると、大勢の生徒が手を振ってくれました。20061023095120.jpg

 授業は、小学校5年生の算数と、4年生の理科の授業参観をさせていただきました。一クラス50人強が4人掛け机の狭い教室で、教師とゲームで遊んでいるような反応の中、熱心に勉強していました。
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 全て英語で行われ、インド人の英語力のすごさを見せ付けられました。インドでは、国民統一の言語はなく、上級階級では英語、下級階級ではヒンズー語、さらには州ごとに異なる言語が使われているため、憲法では17の公用語を認めています。前述のヴイルキー社長に聞くと、現地のカルナータカ州の言葉はほとんど使わないため忘れたと言っており、英語が主要語になっているとのことです。この学校のほとんどの生徒が英語中心の生活になっているようで、上級階級では、インドに根付くカースト制度の階層差別より、英語力の差別が実質的に、就職、生活に大きな影響力をもっているようです。
 
2. カルナータカ州政府企業誘致局
 人口5.6百万人のバンガロールを有するカルナータカ州の人口は55百万人おり、農業中心の生産性が低い州でした。しかし、科学技術としては、1909年設立のインド科学大学院大学があり、1991年の経済開放政策以降、バンガロールが頭出してITを中心に成長しました。
当日対応してくれた局長から、州政府がバランスの良い産業育成を目指し、現在では、毎月、100社前後の企業がカルカータナ州に進出し、その7~8割がインド企業、その他が外資企業、日本企業は2社程度との説明がありました。
トヨタが2000年からこの州で生産を開始し、現在、支店(13)、駐在員事務所(10)を除くと、現地法人化した日本企業(52)内、車(11)、IT(13)が主要な進出企業となっています。ここでも、企業進出の許認可権を速く得るには、局長などへの賄賂が必要のようです。
IT拠点らしく、局長から頂いた企業誘致資料は、CDまたはMDなどのコンパクトなプレゼンテーションとなっていました。

3. (株)ナビス日本語トレーニングセンター
 ジャスダックに上場しているクエストの孫会社として、バンガロールに、オプティス・インド(60人のソフト開発会社)およびナビス日本語トレーニングセンター(社員13人のうち、日本人教師6人)を設立しています。私達は、2005年6月設立された日本語トレーニングセンターを訪ね、午後7時から始まる実際の授業を参観しました。
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 前述したように、インド人の言語への対応は、日本語のような固定的観念がないためか、必要とする言語に対しての吸収能力はきわめて高く、当日の受講者も、IT企業、大学教授等の社会人であり、3ヶ月も習えば、日常会話は普通に話し、半年間で中3レベル、英検に相当する1級希望者も現れているようです。
 日本語ができるITエンジニアリングは、バンガロールでは数千人規模にしようとしていますが、政府助成金なしに行われているため、現在では200人前後と推測され、インド人IT技術者がわざわざ日本語を習うより、英語圏での就職を優先しているようです。
バンガロール内で日本企業向けのソフト開発を行う日系企業は、当社、日印、フジ、そしてバンガロールを案内してくれたJINの4社のみです。
 中国・大連は、日本語人材5万人計画を政府主導で進めており、今後、バンガロールと大連のIT合戦が激しくなりそうです。
 
4. (株)JINインフォメーションシステム
 バンガロール視察2日目の20日(金)は、前述の「ディワーリ」祭りによる休日でした。しかし、JIN社内には、インド人社員30人の1/3が出社しており、日本企業から受注したソフト開発を行っていました。アプリケーションソフト開発がメインであり、日本国内の平均受注金額の3~5割の値段で提供しているとのことでした。
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 大連などの中国IT会社は、日本語漢字が理解できるハンディがあるが、ソフト開発能力は、インド人が上回っているようです。

5. ITPL
1994年、シンガポール政府系企業、カルナータカ州政府、TATAの3社合弁により、バンガロール市中心部から東へ15km離れた土地を取得し、ITパークを建設しました。
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この敷地内は、現在、最後の建物となる6棟目を建設中であり、全ての企業のソフト開発は輸出向けであるため、10年間の無税優遇措置を受けられるとのことです。当パークの近隣にも、近代的なII企業のビルが建設され、または建設中であり、数年後の姿を想像すると、様変わりが予想できました。
カルナータカ州内には、「Electoric City」および「STPI」と呼ばれるITパークがあり、これらの地域に1700社のIT企業が存在し、そのうち500社が外資企業となっています。

6. JETRO(日本貿易振興機構)
 インド視察最後の視察として、在インド日本大使館の榎大使から紹介を受け、インド在住10年以上の久保木氏(バンガロール事務所所長)に面談し、同氏からバンガロールを中心としたさまざまな情報を提供してくれました。
バンガロールの平均所得は、デリー、ムンバイに次いで、インド国内では3位となっています。久保木氏との意見交換から、今後、バンガロールが世界のIT拠点となるのは間違いなく、日本経済との関係性を強化する必要性を実感しました。
 また、今回のインド視察を通じて得た私の感想は、『インド人は先天的に自分の身近にあるデータベースを区分する傾向を生み出しているのは、インドの無数の神々と多様性を受け入れるヒンズーの精神性・哲学性にあり、これがITのデジタルによる情報伝達整理技術をインド人が得意としている背景である』との考えを久保木氏に問い、インド滞在に疑問に思ったことの意見交換を行うことができました。

  以上で、「インドの人口大国とIT視察報告」を終了します。これから1日かけて成田へ帰国します。今回の視察は、21世紀という情報・IT時代の世界の今後の姿を予想させる大きな潮流を、このインドで見ることができました。これからも、「世界で鍛えた行動力」で、地球規模で活動してまいります。
(10月21日(土)バンガロールにて)