昨年5月に新・会社法が施行され、その時、ほとんどの大会社の経営者は、内部統制システムの構築を取締役会で決定しました。また、金融商品取引法の施行と合わせ、1月31日、企業会計審議会から「財務報告に係る内部統制の整備(略称)」に関する意見書が出され、株式公開会社は内部統制システムの構築に、平成20年4月までに整備することが既定路線となり、企業の現場では内部統制システム構築に関する調査またはコンサルティング契約の締結等、大きな不安と混乱が生じています。
 このような状況下、内部統制システム構築に関して、会社法では何を期待しており、何を要求しているかをもう一度確かめるため、会社法作成の中心者であった法務省民事局商事課長の相澤哲氏を講師に招き、「会社法と内部統制」をテーマに勉強会を開催し、10人のメンバーが参加されました。
 奇しくも、3月9日までに公認会計士法改正案が決定され、みすず監査法人の監査部門の大再編の報道等、公認会計士業界が大激震の最中の勉強会だけに、緊張化あふれる研究会となりました。
 相澤課長の説明で、2つの点が印象に残りました。一つは、中小会社のガバナンスのあり方に関して、会計参与制度の導入、会計監査人の利用等、選択可能な制度利用が可能になっていることとあわせて、ガバナンスに関わる取締役、監査役、会計参与等の役員の責任は重くなっていると明言されたことです。
二つ目は、会社法に内部統制システムを構築することについての決定義務がありますが、相澤課長は明確に、「『「内部統制システム」を構築しないことを決定することもできる』と述べられ、経営者の不祥事または社内体制に問題が生じない自身のある会社は、この内部統制構築をしない決定もできるわけです。結局、今回の内部統制システム構築は、経営者・役員の責任回避装置に使われることは明白であり、会社法にある善管注意義務以上の努力を株式公開会社は行わなければならないことになります。
 上記以外にも、社外役員の意義、会計監査人制度の充実、親子会社のガバナンスシステム等、ガバナンスに関する多くの説明および質問があり、少人数ならではの会社法立法者との本音の意見交換ができた研究会となりました。
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