強い親として子どもを支配する親もいれば、「弱い親」であることで子どもの自立を妨げる親もいます。

この場合の親は「母親」であることが多いです。


「弱い母親」といっても、実際、統合失調症やうつ病などの病を抱えていることも多いですので、母親が悪いというわけではありません。


ただ、一部の母親は、自分の病気を利用して、子どもを自分の思い通りに操っていることがあります。


以下の2つのケースがその例です。

 

<統合失調症の母親を支えてきたSさん>

母親が統合失調症で、自らも20歳で摂食障害と統合失調症を発症したSさん(カウンセリング開始時年齢∶28歳)は、幼い頃から母親が精神的に不安定でした。

母親は毎日のように

「死にたい」

お母さんは今日死ぬかもしれないよ」

と幼いSさんに言っていたそうです。


そのため、幼稚園や小学校から帰宅したときに、母親が既に遺体になってしまっているのではないか、という不安がSさんには常につきまとい、母親の世話をすることが自分の生きる意味になっていったそうです


でも、Sさんが中学3年生になったころ、母親の体調が改善し、Sさんを置いて外出することが増えていきました。


Sさんは「生きる目的がなくなった」と感じてリストカットをするようになり、20歳の時に摂食障害を発症。

さらに、被害妄想が激しくなり統合失調症も発症。

同棲していた男性を包丁で刺そうとしたため措置入院となりました。


Sさんはその後日常生活を送れるくらいにまで回復して結婚し、女の子を産みましたが、その後離婚して、今はシングルマザーとして生活保護を受けながら娘と共にくらしています。


母親とは関わらないようにしているものの、母親から電話があるとつい出てしまうそうです。電話では何かしら小言を言われ、嫌な気持ちにさせられるそうで、母親との電話の後は必ずリストカットしてしまうそうです。それでも母親を断ち切れない自分を責め、母親を責めながら生きています。

 

<ママを助けるのが自分の役目と話すMちゃん>

Mちゃん10歳は、まさに今、母親のために生きているという状況です。

母親はうつ病の診断ですが、境界性人格障害も疑われます。

もうママは死ぬからね」

と言っては包丁を持ってトイレに立てこもり、Mちゃんはトイレの戸をたたきながら

「お願いだから死なないで」

とお願いし続け、何時間かすると母親がトイレから出てくる・・・ということを繰り返していました。

Mちゃんとその母親は、今は母子生活支援施設で生活しており、母親も以前よりは精神的に安定してきていますが、今も時折命を絶とうとする行動に出るとのこと、Mちゃん親子を担当している生活相談員から聞いた話では、Mちゃんは

ママを助けるのが私の役目なの」

と言っているそうです。

Sさんの事例のように、母親の病状が改善したり、あるいは母親が再婚したり・・・ということがあった場合、恐らくMちゃんも生きる意味を見失うだろうと思います。Mちゃんに対しては、今から継続した支援が必要だと感じます。

 

また、病名がつくほどの精神疾患を患っているわけではないものの、死をほのめかすことで子どもをコントロールしている親もいます。


32歳の男性、Tさん。

Tさんが赤ちゃんの頃に両親が離婚し、母親に引き取られたそうです。

母親はもともと繊細な面があり、自分が尊重されていないと感じると、ヒステリックに叫んだり、かと思うとメソメソ泣くことがあったそうです。

Tさんが母親とは逆の意見を言うと、母親は決まって泣き出し、

もうお母さんは死んだ方がいいってことなのね」

お母さんは消えることにするね・・・」と言うため、Tさんはなるべく母親に反論しないようにして生きてきたそうです。


常に自分の気持ちを抑圧して生きてきたことで、Tさんは色々な症状に苦しんでいます。

パニック障害が主な病名となりますが、その他にも

◆虫恐怖

◆高所恐怖

◆古びた食器によそわれた料理が食べられない

◆3人以上で食事に行くと食べ物が喉を通らない

といった症状があるそうです。


また、誰にも嫌われたくないという思いが強く、たとえ今後関わることがないだろう相手に対しても、コンビニの店員さん相手でも(自分が客という立場であっても)、嫌われてはならないという気持ちになるそうです。


さらに、子どもの頃は、歴史の授業を受けていると、何故かとても落ち着かなくなり、不安になり、教室中をうろうろして気を紛らわしていたそうです。


Tさんの話を聴いていると、どこにも身の置き所がなく、それは「今、ここ」に限ったことではなく、過去に思いをはせることも怖いくらい、地に足がついていない状態のように感じました。

自分というものをずっと「殺して」生きてきたことで、人格の根っこすらも危ういものになってしまったのだろうと思います。

 



子どもにとって何が一番の恐怖かといえば、親、特に母親を失うことです。


母親がいないと生命に関わることを本能的に知っているわけですので、生命に欠かせない存在が、いついなくなるかわからないという不安は、これ以上にない恐怖なのです。


ただ、病気と闘っている母親の子どもが皆不安定かというと、決してそうではありません。

それは、病気の母親であっても、子どもの命を尊重し、子どもの意見を尊重し、自分よりも大事な存在として扱っているからだと思います。


でも、そうではなくて、

母親がいることで初めて自分の存在価値があると思わされていたり

逆に言えば、

母親がいなくなれば自分の存在価値もなくなると思わされたり、

母親を失わないために子どもが自分の人格を殺さなければならないような事態は、子どもにとってとても深刻な問題をもたらすことが多いです。

 

上に挙げた例ほど極端ではないとしても、日ごろから

「そんなこと言うなら、もうお母さんいなくなっちゃうよ」

「あなたのせいで、もうお母さん疲れちゃった」

「どうせお母さんが悪いんでしょ、お母さんがいなくなればいいんでしょ」

などという言葉を子どもに浴びせかけていたとしたら、子どもはその都度傷を負っています。


傷を負っていることを母親に感づかれてしまったら、今度こそ本当に母親を失うことになりかねませんので、増え続ける傷には気づかないふりをして、どうにか自分を保とうとします。

明るい「良い子」として振る舞うようになります。

でも、傷だらけになれば、もはや隠すこともできなくなり、精神症状や身体症状として現れることになるのです。

 

子どもに威圧的に接したり、逆に、病気を盾に取ることで子どもをコントロールすることは、いずれも「子どもらしさ」を失わせることになります。


本来、子どもは

必要以上に親に気を遣わず、自由に言いたいことを言える状態が「健康的」なのです


自分の親子関係について、ぜひ一度振り返ってみてください。


自分が母親側に当てはまる場合も、子ども側に当てはまる場合も、自力で今の自分から抜け出すことは難しいと思います。


是非心療内科やカウンセリングに足を運ばれることをお勧めします。


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