式乾門院御匣 吉野川 | わたる風よりにほふマルボロ

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new第7回「現代短歌社賞」

選考結果の載った

『現代短歌』2020年1月号に、

梶間の8首抄が掲載されました。 

「梶間和歌の歌の載っている1月号を」

と言い添えてご購入いただけますと

とても有難いです。

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new2月23日(日)、プチ講義しますnew

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弘安元年百首歌奉ける時

 

吉野河氷とけゆく春風にあらはれそむる波の初花

 

式乾門院御匣(しきけんもんゐんのみくしげ)

新続古今和歌集春上41

 




【口語訳】


吉野河の氷が

春風によってとけてゆく。

その春風によって現れ始める花は、

冬のあいだは氷に閉ざされて

見えなかった、波の初花。


(訳:梶間和歌)

 
【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

さびしさをとひこぬ人の心まであらはれそむる雪の明ぼの
宮内卿 新続古今和歌集冬692

 

吉野河:大和の国の歌枕。

 雪・桜などが詠み込まれる。

 

氷とけゆく春風:氷がとけてゆく、

 その要因となった春風。

 「氷ときゆく春風」ならば

 「氷をとかしてゆく春風」の意。

 表しているものは同じだが、

 「とく」の活用によって

 自動詞か他動詞かが変わり、

 文法的に表す意味も厳密には変わる。

 

あらはれそむる波の初花:

 現れ始める、今年初めての波の花。

 「初花」は、その年、その季節になって

 最初に咲く花、

 またその草木に最初に咲いた花。

 

 

 

宮内卿「さびしさを」でも触れましたが、

「あらはれそむる」は
宮内卿以前にはなかった表現

とのこと。

 

 

宮内卿

言わずと知れた新古今歌人で、

後鳥羽院付きの女房。

 

後鳥羽院の世話をする女房ではなく、

実質的には

良い歌を詠むことを求められて

院に見出された人です。

 

“歌の家”に生まれた

藤原定家や俊成卿女などと異なり

決して

環境に恵まれたわけでもないのに、

期待という名のプレッシャーだけは

すごくて。

 

その期待に応えようと歌道に打ち込み、

4年前後で二十歳前に早世したとか。

 

 

式乾門院御匣は

後鳥羽院の兄である後高倉院の

皇女、式乾門院に仕えた女房。

 

のちに、同じく後高倉院皇女である

安嘉門院に仕えました。

「安嘉門院三条」と同一人物

と考えられています。

 

父は源通光。彼は

後鳥羽院妃、承明門院の

異父同母弟です。

 

その娘が式乾門院御匣なので、

彼女の生没年は不詳ですが、

世代としては

後高倉院や後鳥羽院の子の世代

に当たるかな。

 

 

宮内卿は後鳥羽院より

少し若いぐらいなので、

 

式乾門院御匣は宮内卿より

のちの生まれ

ということになるでしょう。

 

早世したけれど名と歌を残した

宮内卿の生み出した表現を、

式乾門院御匣も摂取したのですね。

 

 

吉野河氷とけゆく春風にあらはれそむる波の初花

 

 

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「現代短歌社賞」応募作8首詠の

掲載された

『現代短歌』1月号はこちら

「梶間和歌の歌の載っている……」

の一言もぜひお願いします^^

 

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