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四月一日頃雨ふりける夜忍びて人に物いひ侍りて後、とかくびん悪しくて過ぎけるに、五月雨の頃申し遣はしける
袖ぬれしその夜の雨の名残よりやがて晴れせぬ五月雨の空
藤原俊成
玉葉和歌集恋四、1626
あなたとの逢瀬は
いくら愛し合っても飽き足らず、
雨に涙に袖を濡らした
あの夜明け。その名残より
そのまま一向に晴れもせず、
ひと月も経ち、
五月雨の季節になってしまった。
あなたに逢いたくて逢いたくて、
逢えなくて、心乱れ、
五月雨の空を眺めている。
(訳:梶間和歌)
【本歌、参考歌、本説、語釈】
袖ぬれし:雨と涙の両方に
袖を濡らしたことを表す。
やがて:そのまま、引き続き
五月雨:心の「乱れ」を掛ける。
まあ、こうは言いながら、
本当に逢う気があるなら
万難を排して雨のなか風のなか
駆けつけるものでしょうが。
1ヶ月逢いに行かないなんて、
現代でも
遠距離恋愛ぐらいでしょう。
いや、確かに、友人の元彼は
近くに住んでいても
忙しさにかこつけて
数ヶ月逢わないようなことを
していたようですが、その結果
別れに至っているわけで。
理解されやすい現象ではない
ということですよね。
何が何でも逢いに行くほどの
愛ではない、
だが
相手に恥を掻かせてもいけない、
手放すには惜しい、
なんなら別れてもよいが
こちらの悪い噂を立てられては
困る……、
ということで
こうした甘い言い訳の恋歌が
やり交わされる。
光源氏など、
こういうのが大得意でしたね。
袖ぬれしその夜の雨の名残よりやがて晴れせぬ五月雨の空
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