西行 なにとなく | わたる風よりにほふマルボロ

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new第7回「現代短歌社賞」

選考結果の載った

『現代短歌』2020年1月号に、

梶間の8首抄が掲載されました。 

「梶間和歌の歌の載っている1月号を」

と言い添えてご購入いただけますと

とても有難いです。

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new2月23日(日)、プチ講義しますnew

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春立つ日よみける

 

なにとなく春になりぬと聞く日より心にかかるみ吉野の山

 

西行
山家集1062

 




【口語訳】

 

これという理由もないのだが、

なんとなく、

春になったと聞く日より

み吉野の山が心に懸かってならない。

み吉野の山が、

そこに遠くない将来咲くだろう桜が。

(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

なにとなく:「春になりぬ」「聞く」に

 係るのではなく、

 「心にかかる」に係る。

 

春になりぬ:春になった。

 「ぬ」は完了の助動詞で、

 「たったいまそうなった」

 「それが現在に影響している」

 という完了の意を表す。

 

み吉野:大和の国の歌枕

 「吉野」の美称、桜の名所。

 和歌の常識では、立春を迎えると

 梅や鶯を思うのが常識。

 西行はその家集からも

 春ごとに吉野を訪れていたことが

 わかる。

 和歌的な基礎教養を踏まえつつも

 必ずしもそれらに囚われず

 実感や体験を詠むこともした西行の

 特徴が表れている。

 

 

 

和歌的な基礎教養は

しっかりと踏まえている西行。

 

このブログでも

何度か触れていますが、

 

伝統や基礎を踏まえて乗り越える

ということを適切におこなった歌人でも

あるといえるでしょう。

 

 

西行の歌のおおらかさや

読みやすさをそのまま受け取り

「小難しい新古今和歌と違って

 西行はいいなあ」

と読むのは、ちょっと。

 

表れが異なるだけで、

“踏まえて乗り越える”という本質は

西行の営みと新古今歌人のそれに

共通しているでしょう。

 

 

 

新古今時代の歌人たちは、

日本語の曖昧さ、多義性を

むしろ積極的に活用しました。

 

そうした詩的特徴は

こちらでも考察されています。

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ということで、例えば後鳥羽院の

ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山かすみたなびく
後鳥羽院 新古今和歌集春上2

の「ほのぼのと」は

「春こそ空に来にけらし」と

「天の香具山かすみたなびく」の

両方に係ると読むべき。

 

 

後鳥羽院の歌に限りませんが、

新古今歌人たちが

日本語のどういう特徴に魅力を感じ

そのような語の用い方を採用したのか

の理解が足らず、

その理解に基づいた読みが

できなかったからこそ、

 

後世、特に近世(江戸期)の歌論では

 

「この副詞はどこに係るのだ」

「いや、下の句に係るのだ」

「いいや、違う」

と議論になったのだとか……

 

 

ふう。つまらないことですね。

 

副詞が複数に係ることなど

読めばわかりそうなものですが。

 

 

 

という新古今的な知識や感性を

持っていると、西行のこの歌の

「なにとなく」も

複数の句に係るのかな、

と見ようとしてしまいますが。

 

まあ、これも、読めばわかる。

 

 

「なにとなく春になりぬ」

「春になりぬとなにとなく聞く」

 

こんな日本語は意味が通りません。

 

これは、「なにとなく心にかかる」と

読むべきでしょう。

 

 

西行が新古今的な流行とは

違った方向に歌境を拓いていった

特異な歌人である、

 

という知識が仮になくとも、

歌ときちんと向き合う姿勢があれば

きちんと受け取れますね。

 

 

知識は、

あるに越したことはないけれど、

それに呑まれてもいけないわけで。

 

知識も大事。

歌そのものと向き合うことも大事。

 

和歌鑑賞のうえで

どちらも車の両輪とすべきでしょう。

 

 

なにとなく春になりぬと聞く日より心にかかるみ吉野の山

 

 

*:..。o○ ○o。..:*

 

「現代短歌社賞」応募作8首詠の

掲載された

『現代短歌』1月号はこちら

「梶間和歌の歌の載っている……」

の一言もぜひお願いします^^

 

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