西行 きりぎりす | わたる風よりにほふマルボロ

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題しらず

 

きりぎりす夜寒(よさむ)に秋のなるままに弱るか声の遠ざかり行く

 

西行

新古今和歌集秋下472



【口語訳】

こおろぎよ。

秋が深まり冬を目前に

世の寒さも日に日に増してゆくなか、

お前も弱ってしまったのか。

日に日にその声が遠ざかってゆく。

(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

きりぎりす:現在のこおろぎのこと。

 

夜寒:晩秋のころ、

 夜の寒さがひとしお感じられること、

 またその寒さや時季を表す。

 

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西行嫌いを公言する塚本邦雄が、

この歌は技巧を凝らした佳い歌です。

「弱るか」が起死回生の妙薬として実に効いています。

しかも、元武士らしい骨格の正しさが出ていて、大胆さも含んでいます。

西行の傑作と言っても過言ではないと思います。

と珍しくほめていました。

 

 

そうですね、私も

句切れと意味の区切れのずれを生む

「弱るか」が

大変良い味を出していると思います。