藤原俊成 たれかまた | わたる風よりにほふマルボロ

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題しらず

たれかまた花橘におもひ出でむわれもむかしの人となりなば

藤原俊成
新古今和歌集夏238
 
 
【口語訳】

花橘、
昔を、そして昔の人を思い出す
その花の香り。
私がその香に懐かしい昔を思い出すように、
いつか、誰かまた私のことを
橘の香に思い出してくれるのだろうか、
いつか私が死に
過去の人となってしまったとしたら。

(訳:梶間和歌)
 
 
むかしの人:本歌で詠まれたように
 以前馴染みのあった人の意味でも用いられるが、
 「むかしの人となりなば」(昔の人となってしまったならば)ゆえ
 此処では故人の意味として解釈。
 
 
本歌は言わずと知れた古今集夏139

さ月まつ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
(詠み人知らず)